スタイリストが着たい服「プロたちも真似したい」コーディネートのテクニック


秋冬アイテムをひととおり見た、スタイリストたちの力を借りてワードローブづくりの参考になるトピックスをお届け。コーディネートルームで繰り広げられた何気ない雑談を掘り下げて、リアルに使えるトレンドをピックアップ。



【STYLIST MEMBERS】
(渡邊恵子さん) 実用性とスタイルアップを兼ねた服選びに定評。 (樋口かほりさん) 「大人に似合うカジュアル」をモットーにしたコーディネートが毎号人気。 (岩田槙子さん) ハンサムなシンプルスタイルが得意。 (塚田綾子さん) 小物の素材や色づかいで遊びを効かせる提案が得意。 (船戸唯さん)メンズライクなムードを、女性らしくとり入れた装いで人気。 (玉木穂香さん)シューズ企画を担当することも多く、足元まで考えられたスタイリングの提案はピカイチ。


スタイリストが注目する「秋からの新しい服」

クラシックなムードが漂う今季は、正統派なアイテムをベースに、「着方」を変化させたり、小物で遊びを加えることが要になる予感。膨大な量のコレクションルックから、ファッションのプロが選んだ押さえればまちがいなしのキーワードをご紹介。




クラシカルに「ニットアップ」

今シーズンはカーディガンやシャツタイプの硬派なニットのセットアップが豊作。膨張見えしないよう、適度な肌見せで抜けを意識。 「ほっこりしがちな全身ニットは、レディライクな小物をちりばめると、大人っぽくまとまります」(塚田さん)




スキニーの延長で「ミニマムなレギンス」

服にボリュームが出がちな季節に、あえてタイトなレギンスを合わせて気分転換。リラクシーな着心地で、スキニーほど緊張感なく、秋冬のモノトーンスタイルをスマートに仕上げられる。


「レギンス特有の起毛感によって、細身なのにやさしげな印象。自分の実感としても、実際に選ぶときは足首が見えるタイプを選ぶと、ぴったりとしたシルエットに隙が生まれます」(渡邉さん)


ボリュームアップして気楽にマニッシュ

引き続き旬のメンズライクな装いは、さらに身ごろに余裕をもたせて、「サイズ感でハズす」のが鮮度を高めるカギ。上下ルーズな合わせに、どこかに起毛感のある素材をとり入れることで、上品に落ち着く。


〈写真左〉「ここまでオーバーサイズのシルエットがだらしなく見えないのは、Vネックでキレを足せるおかげ。このVネック+オバーサイズのパンツの合わせは私的にも真似したい組み合わせ」(渡邉さん)




個性は「ネックライン」へ移行

印象操作に直結する「首元の変化」は見のがせない。顔よりボリュームのある「スタンドネック」と、潔く開いた「Vネック」が個性と洗練さを加算。


ネックラインの工夫がひとつのキーワードで、今シーズンとり入れたいテクニック。たとえば、写真右のDIORのコレクションは、ニットベストに、フリルブラウス、さらにはロングネックレスの三つでVネックラインをつくっていて、ほっこりしがちなニットベストの装いがセンシュアルな雰囲気に」(塚田さん)


「写真左は立体的な首元と、タイトヘアのコントラストでモードな印象。ネックをきわ立たせるためにもアクセはつけずミニマルに」(船戸さん)




服はミニマルに「バッグは大きく」

極端に大きいレザーバッグと、コンパクトで緊張感漂うミニワンピの新バランスに注目。 「私もこの秋最初にとり入れた小物はビッグサイズのバッグ。装いのハズしになるだけでなく、体を華奢に見せてくれるうれしい効果も期待できる」(岩田さん)


「各ブランドの展示会でも、レザーバッグにキャッチーなキーホルダーをじゃらっとつけて、自分好みにカスタマイズする提案が増えていた印象です」(塚田さん)


毛足は長く「もけもけ小物」

真っ先にとり入れたいのは手軽に秋気分を味わえるファー小物。毛足長めでも派手に転ばない、白やベージュのやわらかい色で採用。 「シンプルな装いに一点投入するだけで一気にかわいげが生まれます」(塚田さん)


「たとえば09.DRIES VAN NOTENのファーのバッグは、それ一つでこなれて見える。実際に今号のGISELeの撮影でも、ファーシューズを使いました。小物からなら軽やかに季節を先取りできそうですよね」(樋口さん)


「今年のコレクションでは、シンプルなアイテムだからこそ、その「組み合わせ」次第で大きく印象が変わることを改めて実感しました。服装がクラシックなぶん、小物遊びがいっそう楽しくなりそうです」(渡邊さん)


「私は今回リースにまわる中で、ハートやリボンのモチーフがついた甘口な装飾や、スパンコールを贅沢に使った存在感のあるシューズが増えたように感じました。足元ならさりげなく、大人でも多少インパクトのあるデザインをとり入れやすい」(玉木さん)




軸色は「グレー・ブラウン・カーキ」

「去年に引き続き、ブラウンやグレー、カーキなどアースカラーを多く見かけた印象です」(塚田さん)


「ハンサムなイメージのカーキやグレーも旬のツヤ素材をとり入れることで女性らしさをキープできる。異素材MIXでいうと、01.MICHAEL KORSはグレーのワントーンの中で顔まわりにニットを巻きつけたり、レザーのブーツでツヤのある質感を足したり、単調に見せない着方が参考になります」(渡邊さん)


「グレーやカーキはニュアンスのある色だから、黒ほど印象が強くなりすぎず、重ね着もしやすいなと思います」(船戸さん)




色を選ぶなら「何色」ではなく「みたいな色」

コーディネートルームの会話から生まれる「スタイリストの言葉」の裏側。「あいまいな色だからいい」「質感があるからいい」など。コーディネートを組んでいる作業場で繰り広げられるよく聞く言葉の真意とは?



「トマトみたいな赤」ニット

「赤といっても色みはさまざま。真っ赤よりやさしくて、オレンジより濃厚な赤を探しているときによく浮かぶのは“トマトの赤”。さらに連想されるみずみずしさも加わる気がします」(渡邉さん)




「パールみたいな白」シャツ

「生地の風合いやツヤのぐあいによって、意外と幅の広い光沢のある白シャツ。“パールの白”ととらえることで、上質な雰囲気までも演出できるのかなと思います」(岩田さん)




「たまごみたいな黄色」の服

「一般的なベージュより黄みが強くて白っぽい。たまごのような黄色のスカートやワンピースなど、スタイリングに鮮度と親しみやすさ両方をもたらせるので、重宝します」(渡邊さん)