Topic01
洗濯前に知っておきたいこと
「洗えるニット」は市販の洗剤で大丈夫?
オシャレ着用であれば問題なし!
「ドラックストアなどで手に入る洗剤でも“ オシャレ着用”なら、ニットに対応しているものがほとんど。これらを使って洗濯機で洗うなら、畳んできちんとネットに入れることが大事。ニットが踊らない、ぴったりサイズのネットを選ぶことで、さらに形くずれや傷みを防止できます。ドライコースや弱運転コースの強く回らないモードを選択し、脱水はごく短時間で済ませましょう」(皆藤さん)
Item
〈左から〉ウールカシミアシャンプー 475mL 3,200円+税/ザ・ランドレス ニット素材に特化。プロ・ウォッシュ 1kg 2,500円+税/アスパイラル クリーニングのプロが開発。アクロン フローラルブーケの香り 500mL 331円+税(編集部調べ)/ライオン エマール リフレッシュグリーンの香り 500mL 320円+税(編集部調べ)/花王
形くずれって元に戻せる?
「たるみ」か「縮み」かで対処法が分かれます
たるんでしまったとき
「肩についたハンガー跡や、着用後にできたひじ跡などのたるんでしまった形くずれの場合、スチームアイロンが使えます。その箇所に蒸気をタップリあてたあと、元の形に戻すようなイメージで手でポンポンと軽くたたいていく。そうすると徐々に元のフォルムへ整っていきます」(皆藤さん)
縮んでしまったとき
「縮んたニットを伸ばす方法として髪用のトリートメントが役に立ちます。①40°Cのお湯 3リットルに、人さし指の第一関節くらいの量のトリートメントをとかします。②そこにニットを入れて、全体にトリートメント液を行きわたらせる。③軽く手でしぼり、ぬれている状態のときに少しずつ引っぱりながら縮みを解消します。(※このときにスチームをあてればさらに効果的)。そのまま形を整え、干しましょう」(中村さん)
注意すべき編み方やデザインは?
ざっくり編みとビジューつき
「ローゲージ編みのものは、繊維がふくらみやすく、縮みやゴワつきが出やすい。なのでクリーニング屋さんに頼むか、やさしく手洗いすること。ビジューつきニットは洗濯機の回転で壊れてしまわないよう注意が必要。タオルでビジューを包み込むように畳み、ネットに入れてから洗濯を」(中村さん)
カシミヤ・アンゴラ・モヘヤなどの繊細な素材を洗うには?
手洗い時にオイルをたらして
「少量のオイルを一緒に使用すると、高価なニットの独特なしっとり感を保つことができます。カシミヤやアンゴラなどの繊維にもともと含まれている油と似た、ラノリンオイルを使うのがオススメ」(中村さん)
Item
Now Foods 液体ラノリン 4液量オンス118ml 750円+税(編集部調べ)/iHerb 乾燥した肌にも使える万能オイル
とりあえず洗濯機で洗ってもいい?
手洗い⇒つけ置き洗いがベスト
「洗濯機で洗えるものもある、くらいの感覚です。とくにウール素材のニットは、水を含んだ状態で摩擦が起こると縮んでしまうので手洗い以外はなるべく やめておくべき。できるだけ動かさず、つけ置き洗い&短時間で終わらせること」 (皆藤さん)
「“洗えるニット ”でも 、縫ってある部分(えり・そで・すそなど)は縮んでしまいがち。干す前に引っぱるなどして形を整える作業が大切です。洗濯表示を確認することも忘れずに」(中村さん)
傷めずにシミをとる方法は?
布もしくは歯ブラシを活用
「生地と生地をこすり合わせてゴシゴシするのは、いちばんしてはいけないシミの取り方。基本は、シミがついた部分の裏側にキレイな布をあて、表から水または洗剤を含ませた布でポンポンと細かくたたく 。そうすることであて布にシミが移り、汚れがとれていきます」(皆藤さん)
「身近なアイテムでいえば、歯ブラシの毛のない裏面を使って落とすことも。①消毒用エタノール1:液体洗剤2で作 った、セルフクレンジング剤を用意。②シミの部分に吹きかけて歯ブラシの裏でやさしくこすって いきます。③40°Cのお湯ですすぎ、汚れが落ちたらいつもどおり洗ってください。繊維にやさしいわりにシミがとれます」(中村さん)
Topic02
仕上がりに差がつく干し方・伸ばし方
伸びない干し方って?
水の重さに負けない「平干し」を
「ズボン用ハンガーのクリップ部分を、ワイヤーネットの両端にとりつければ、簡単にセルフメイクの平干しネットが完成。もしハンガーにかけて干す場合は、肩の部分に厚みのあるものを選ぶ。比較的安価で丈夫な、無印良品のハンガーはとくに使えます。洗濯用ではなく、クローゼットに使用する“ ポリプロピレンのハンガー”を選んでください」(中村さん)
Item
ポリプロピレンハンガー婦人用・ピンチ付 241円+税/無印良品 池袋西武
できちゃったシワ…どうしよう?
「30秒程度の軽い脱水にすることやドライコースなど、やさしく洗い上げるコースを選ぶことでも極力シワを防げます。乾いたあときちんとシワをのばすためには、やはりスチームアイロンがいちばん効果的。たっぷり蒸気を含ませ、少し引っぱるようなイメージでプレスするとキレイにとれていきますよ」(中村さん)
「アイロンなど準備が面倒なとき。ハンドスチーマーで蒸気をあてて軽く手でシワをたたくようにするだけでも、案外キレイにとれます」(皆藤さん)
Item
〈左〉ティファール フリームーブパワー9985 FV9985J0 25,200円+税(編集部調べ)/ともにティファールお客様相談センター〈右〉ティファール アクセススチーム DR8085J0 15,000円+税(編集部調べ)
Topic03
着たあとのメンテナンス
ニットって、着るたびに洗う?
基本的には「洗いません」
「5回着て洗うくらいのペースです。薄手で直接肌にふれるようなニットの場合は汗が気になるので毎回洗うのもオススメします。その人の汗のかき方や生活習慣で洗うペースは変わりますが、 ただ洗いすぎはやはりニットのふんわりとした風合いを損ねてしまいますので」(皆藤さん)
「もしクリーニングに出すなら着方にもよりますが、多くて月に1〜2度くらい。あまり汚れがなく比較的キレイな状態であれば、シーズンのまん中で1回、シーズン後の保管前に1回洗うようなペースで大丈夫です」(中村さん)
飛び出た糸は直せる?
専用針があれば一瞬で解決
「手先が不器用な方でも簡単に使えるほつれ補修針が便利。飛び出ている糸の根本部分に針を刺し、針にあるザラザラした箇所に引っぱった糸を絡めて、裏へ通すだけ。これで糸が目立たなくなります」(中村さん)
Item
ほつれ補修針 18-641 450円+税/クロバー 太針と細針がセット。
キレイに保つ必須アイテムってあるの?
「頻繁に起こりやすい毛玉問題は、意外とドラッグストアに売っているT字カミソリが役に立ちます。表面を軽くこするだけで想像以上に毛玉がキレイにとれますよ。またニットは頻繁に洗濯しないので、着用後のブラッシングを習慣に。ブラッシングすると、表面のホコリなどをある程度落とせ、毛羽立ちをおさえることで毛玉防止になります。KENTの静電気除去服ブラシはいろんな素材に対応できるので重宝」(中村さん)
「着用後にスチームをさっとかけるだけでもにおいやシワがとれます。 殺虫効果もあり一石二鳥」(皆藤さん)
染み込んだにおいはどうとる?
水蒸気が何よりも頼りになる
「まず1つは、スチームアイロンの蒸気をあてることで水が衣類についたにおいを吸着→蒸発させ、軽減します。湯気がたっぷりこもった浴室に一晩かけて置いておくのも同様の効果アリ」(皆藤さん)
Item
〈左〉アートブラシ かんたん毛玉取りブラシ・匠 4,612円+税/ビーエムケー 特製ブラシでそで口などの固まった毛玉もラクに除去。 〈右〉KENT 静電気除去服ブラシ 4,000円+税/池本刷子工業 良質の天然毛を使用。
シーズンオフは、畳んで置いておくだけ?
虫食いを止める対策が必要不可欠
「長期保管の前には必ず洗濯して汚れを落とすこと。汚れは虫の餌になります。洗濯後は虫の入る隙なく密閉してしまうのがベストです。しかし湿気によるカビの心配があるので、圧縮袋などで密閉する際は、湿気を残さないようしっかりと乾燥させてから行ってください。もしタンスに畳んで置いておくなら、防虫剤とともにギュウギュウづめではなく通気性を保って」(皆藤さん)
「保存用の防虫剤を使用するとき、防虫剤はガス化して効果を発揮するため、フタつきのBOXに入れてガスを逃がさないように保管すると効果が高まります。ガスは空気より重いので、防虫剤は服の上に置くように。防虫剤の中でも繊維に直接加工するタイプはより効果が高いので、カシミヤなど大切にしたいアイテムにはとくにオススメ」(中村さん)
Item
プロ防虫エッセンス 100mL 2,600円+税/アスパイラル つけ込んでもスプレーしてもよし。
洗濯家・中村祐一さん
GISELeのお手入れ企画でもおなじみ、“洗濯王子”の愛称で親しまれる中村さん。「家庭でできるプロの洗濯技」が本当に使えると話題になり、テレビや雑誌等メディアにも引っぱりだこ。
修理専科ニットの穴 代表・皆藤美恵子さん
日本でも数少ない“ニットの修理専門職人”として、自宅のアトリエで日々ニットの修理を行う皆藤さん。大手のアパレルブランドから個人のお気に入りのニットまで幅広く対応しているそう。
Illustration_SHEN TANAKA Text_Mika Shirahige