+5歳か -5歳の分かれ道 「後戻りできない」老化を早めている習慣

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「老けない人」の設計図

多すぎる美容情報。その中で何が本当に効果的? 見極めるのは容易ではありません。そこで皮膚科学や栄養学の世界で実証・検証されたデータから、老化の進行を遅らせる、老けない人がしない5つのことをご紹介。(効果には個人差がありそれらを約束するものではございません)




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老化の主犯は「光老化」 その予防が未来の肌を作る

肌の老化の約80%は紫外線によるもの。これは米国皮膚科学会誌(Journal of the American Academy of Dermatology)が明らかにしているデータ。光老化は自然な加齢による肌の変化の約4倍の割合でダメージを引き起こすため、紫外線対策は未来の肌の美しさをつくる最も重要ポイント。


光老化とは、日々浴びる紫外線が肌の奥深くまで浸透し、真皮のコラーゲンやエラスチンを破壊することで進行する老化現象のこと。これにより、肌の弾力が失われ、深いシワやたるみが生まれ、シミや黄ぐすみなどのトラブルも起きやすく。


UV-A波は真皮層に到達し、コラーゲンやエラスチンを分解する酵素MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)を活性化。これにより、肌の構造は弾力性を失い、深いシワやたるみを形成。UV-B波はDNAに損傷を与え、シミや皮膚がんのリスクを高めることが、多数の分子生物学的研究でも明らかになっています。




やめるべきこと

「晴れた日だけ」の日焼け止め使用。これは、UV-A波が曇りの日や窓越しでも透過するという事実を軽視する行為。日焼け止めのこまめな塗り直しや帽子・日傘の活用、長袖の着用なども効果的な予防策。




始めるべきこと

1.全方位型UVプロテクション
SPF50+、PA++++の日焼け止めを年間を通して使用します。これにより、肌の光老化を効果的に抑制。


2.抗酸化成分の内外からのアプローチ
紫外線による酸化ストレスに対抗するため、スキンケアにアスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)を、食事にはリコピンやポリフェノールを積極的に取り入れることで、相乗効果を。トマト(リコピン)、アセロラ(ビタミンC)、アーモンド(ビタミンE)、緑茶(カテキン)が効果的。




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肌を「焦がす」糖化。その「不可逆的なプロセス」を断ち切る

とくにに「毎日口にしているもの」です。糖化がもたらす老化については、日本の金沢大学をはじめとする国内外の研究機関で実施されており、多くの実証データが存在。


糖化(グリケーション)は、体内の余剰な糖とタンパク質が結びつきAGEs(終末糖化産物)を生成する化学反応。このAGEsが、肌の主成分であるコラーゲンを「架橋(クロスリンク)」し、硬くもろくすることが、生化学・栄養学分野の複数の研究で示されています。これにより、肌は柔軟性を失い、黄ぐすみ(カルボニルストレス)や弾力の低下を引き起こす。このプロセスは一度始まると、元に戻すことが非常に困難。




GI値が高いとなぜダメなのか?

GI(グリセミック・インデックス)とは、食品が血糖値を上昇させる速度を数値化したもの。GI値が70以上の食品(白米、食パン、砂糖など)を摂取すると、血糖値が急激に上昇し、大量のインスリンが分泌されるという仕組み。この急激な血糖値スパイクが、余剰な糖とタンパク質が結びつく糖化反応を加速させてしまうのです。




やめるべきこと

GI値の高い食品(白米、食パン、うどん、じゃがいもなど)の過剰摂取。あくまで「過剰に摂取する」ということ。日本人女性の高GI食品「過剰摂取」傾向は、分布でみると「約6割」が高GI主食比率の高い食生活であると各種調査データからも示唆されています。

高GI食品(白米、食パンなど)の「1日あたりの適正摂取量」そのものに明確な数値基準はありませんが、総糖質量で換算すると「1日130g以下(ロカボ基準)」が健康的かつ推奨される目安。ごはんでいえば茶碗2.5杯分。




始めるべきこと

1.低GI食へのシフト
GI値が55以下の食品(玄米、そば、全粒粉パン、野菜、海藻類)を積極的に選ぶ。食事の最初に野菜や海藻類を摂る「ベジタブルファースト」を徹底することで、血糖値の急激な上昇を抑えることが可能。


2.抗糖化成分の摂取
カモミールやドクダミに含まれる成分が抗糖化作用を持つことが専門家の間で示唆されています。また、肉や魚の焦げ(高熱調理でAGEsが発生)にも注意を払い、蒸す、煮る、茹でるなどの調理法を心がけるべき。




3
細胞の寿命を操る「テロメア」と睡眠の関係

国際学術誌「Nature」に掲載された論文によると、慢性的な睡眠不足がテロメアの短縮を加速させるという研究結果。テロメアとは、染色体末端にある「繰り返し配列をもつDNA」と、それに結合するタンパク質群から構成され、染色体の損傷防止や細胞老化の抑制に重要な役割を果たしているもの。細胞分裂のたびにテロメアは少しずつ短くなり、これが細胞の寿命や老化と密接に関係。


テロメアは細胞の染色体の末端にあるキャップのような構造で、細胞分裂のたびに短くなり、このテロメアが短くなりすぎると、細胞は分裂を停止し、老化や死に至ることが老化研究の最新データで明らかに。睡眠不足は、このテロメアを修復する酵素「テロメラーゼ」の活性を低下させるため、細胞レベルでの老化を加速させているのです。




やめるべきこと

慢性的な睡眠不足を「仕方ない」と放置すること。これは、細胞レベルでの老化を容認する行為。睡眠不足の人は、質の良い睡眠を十分に取る人に比べてテロメアの長さが短い傾向が研究で示されており、慢性的な睡眠不足は細胞の老化を早める、というのが最新の研究結果。


睡眠中に細胞は日中のダメージを修復し、成長ホルモン分泌が活発になります。成長ホルモンはテロメラーゼの活性化を介してテロメアの維持に寄与すると言われています。




始めるべきこと

1.質の高い睡眠環境の設計
成長ホルモンの分泌が活発になる時間帯(入眠後3時間以内)に深く眠ることを目指して。そのため、夜11時前には就寝するなど、体内時計を意識した規則正しい生活を送るべき。また、就寝前1時間はスマートフォンやPCの使用を避けて。これはブルーライトがメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を抑制するため。


2.入浴やアロマによる副交感神経の優位化
就寝前にぬるめの湯(38〜40℃)に浸かり、ラベンダーやサンダルウッドなどのアロマを使用することで、心身をリラックスさせ、深い眠りを誘発。




4
細胞を「錆びつかせる」酸化ストレスへのアプローチ

ハーバード大学公衆衛生大学院の研究によると、抗酸化物質を豊富に含む食品を摂取することが、酸化ストレスを軽減し、慢性疾患のリスクを低減するという報告がなされています。

呼吸や代謝、ストレス、紫外線などによって、私たちの体内では活性酸素が発生。この活性酸素は、細胞を酸化させ、DNAやタンパク質に損傷を与える「酸化ストレス」を引き起こし、これは老化や様々な疾病の主要な原因の一つであることが、数多くの臨床試験や疫学調査で実証されています。




やめるべきこと

偏った食生活。特に、加工食品や揚げ物の過剰摂取は、体内の酸化を加速させます。あとじゅうぶんに気をつけたいのが、加工食品や揚げ物の過剰摂取。


これは高温調理や繰り返し使用された油により脂質が酸化し、過酸化脂質やトランス脂肪酸、アクリルアミドなどの有害物質が生成されるため。これらが体内で活性酸素を大量発生させて細胞や組織を損傷し、酸化ストレスと炎症を引き起こし、心血管疾患や慢性炎症性疾患のリスクを高めるとされています。




始めるべきこと

抗酸化物質の戦略的摂取
ビタミンC(柑橘類、ブロッコリー)、ビタミンE(ナッツ類)、ポリフェノール(ベリー類、緑茶)、リコピン(トマト)、アスタキサンチン(鮭)など、様々な種類の抗酸化物質をバランス良く摂取。これにより、多角的に活性酸素にアプローチ。




5
「老けない」ための免疫システムの活性化

加齢とともに、私たちの体は免疫細胞の活動が低下。これにより、肌の炎症が治りにくくなったり、病気にかかりやすくなったりします。健康な免疫システムは、肌の再生や体の若々しさを維持する上で不可欠な要素であることは、生理学やスポーツ科学の分野で広く認められているところ。



やめるべきこと

慢性的なストレスを放置すること。あとは「運動をしない」習慣。ストレスホルモン(コルチゾール)は、免疫機能を低下させることが分かっています。




始めるべきこと

1.腸内環境の最適化
免疫細胞の7割は腸に存在します。発酵食品(ヨーグルト、納豆、キムチ)や食物繊維を積極的に摂取し、腸内環境を整えることが、免疫力向上に直結。


2.適度な運動と瞑想
ストレスを軽減するための瞑想やヨガ、そして血行を促進し、免疫細胞を全身に行き渡らせるための定期的な有酸素運動を習慣化すべきです。激しい運動はかえって酸化ストレスを増やしますが、ウォーキングや週に3〜5回の筋力トレーニングなどの適度な運動は、体内の抗酸化システムを活性化させることが証明されています。




筋トレ=「若返りホルモン」

筋トレがブームですが、これが実はアンチエイジング面から見ても最も効果的。筋トレは成長ホルモン(GH)やテストステロンの分泌を促進し、これらが筋肉の合成を助け、筋肉量や基礎代謝の維持向上に寄与します。成長ホルモンは細胞再生や修復、脂肪分解、骨密度維持などにも重要で、アンチエイジングに直接関わるホルモン。


筋トレで分泌される成長ホルモンは「若返りホルモン」とも呼ばれ、肌や臓器の修復促進、エネルギーレベルの向上、免疫機能強化など多岐にわたる健康効果を持っているもの。有酸素運動とは異なり、筋トレは筋肉量維持・増加により加齢による筋減少症(サルコペニア)や骨粗鬆症の予防効果が高く、若さや体力の根幹に影響することが分かっています。


筋トレは難しいと思われがち。だけど実は脚やお尻など「体の中でも大きな筋肉部分から始める」のが最も効果的。おすすめは「ランジ」「スクワット」。これらは大きな筋肉を簡単に鍛えることができる定番トレーニング。

ランジとは足を前後に大きく開き、股関節と膝を曲げ伸ばしすることでお尻(大臀筋)、太もも(大腿四頭筋)、太もも裏(ハムストリングス)など下半身全体の筋肉を同時に効率よく鍛えられる筋力トレーニングの一種で、体幹やバランス力も向上でき、ヒップアップや筋力の左右差改善にも効果的であり、自宅で始めやすい初心者向けの下半身トレーニングとして広く推奨されているもの。


さらに、上半身を鍛えたい場合は、腕立て伏せや懸垂がおすすめ。腕立て伏せはプランクから始めてもよく、膝をついた姿勢の「膝つき腕立て伏せ」にしても無理なく実践できます。懸垂は補助バンドを使うことで、初心者でも気軽に取り組めます。


また先述した「テロメア」の短縮防止についても「筋トレ」が最も効果的であるという研究結果も。国際的生物科学ジャーナル「Biology」が、20~69歳の約5000人を対象に、ウエイトトレーニングが老化に与える影響を詳しく調べた例として、研究者は各参加者のテロメアの長さを測定。


結果、筋力トレーニングに最も時間をかけていた参加者は、全くやっていない参加者よりテロメアが著しく長いことを発見。トレーニングを1週間に90分やっている人は約4年、生物学的老化が遅かった。これは潜在的に約4年寿命を伸ばしているという結果なのです。




「まず知ること」から創られる

今回紹介したのはいわば「土台」となること。これらが整っていなければ、いかに高いコスメを使おうとも、良い結果を得られる可能性は薄いでしょう。美と健康は1日してならず。最初はキツイ、と思うことも多々あると思いますが、人間は習慣に弱い生き物。5年後「やっておいてよかった」と思える日のために、ぜひこれらを「習慣化」する工夫をしてみてはいかがでしょうか。