少しの変化を求めても、主張が強すぎたり、逆になじみすぎたり、意外とそのあんばいは難しい。地味にも派手にもならない「ほどよさ」につながる、服の選びや着方のさじ加減をスタイリストたちに取材。
(3つのテーマでスタイリストが指南)
①バランスUP「色と服」の選び方
②「見た目が良くなる」テクニック
③選ばれた「とくにいい」ベーシック
「○○すぎない」 色と服の選び方
甘すぎ・堅すぎ・ラフすぎ…などオシャレに必要な「〇〇すぎないバランス」をつくるテクニック。今季のコレクションなどをアイデアソースに、スタイリストたちが今気になるデザインや色とともに、リアルクローズで解説。
甘くなりすぎない

ピンクは黒よりブラウンと一緒に

「毎年惹かれる淡いピンクは、黒と強く着るより、ブラウンで少し甘さを残すのが今の気分。コーディネートを引き締めつつ、辛口にふり切らない深みで、ピンクを大人に似合う色に。(樋口さん)」 辛口好きがピンクを着るなら、シャツやナイロンコートなどメンズライクな服で微糖に転換。ブラウンのとろみスカートで上半身のボリュームを流して。
STYLIST 樋口かほりさん
ベーシックなアイテムをベースに、流行にとらわれず新しさを生み出す着方や組み合わせに、業界内にもファンが多数。毎号表紙をはじめ、数々の企画を担当。
アクティブになりすぎない

モノトーンにまぎれてスポーティに進化

「引き続き注目のスポーティなテイストは、ジャケットやローファーなど正統派な白黒と一緒にとり込めば、街でも浮かない仕上がりに。ハーフパンツ感覚でレギンスを合わせました」(船戸さん) 小さなスウィッシュロゴが地味な飾り気に。
STYLIST 船戸唯さん
着心地はラフ、配色でスマートに寄せる、白黒アイテムを使った都会的なカジュアルスタイルが得意。自身のふだん着もほぼモノトーン。
リゾートすぎない

優雅なワンピースはあえて秋色で採用

「涼しく軽い素材のフレアワンピース。マスタードイエローなど、あえて渋色でレトロに寄せると、日常と非日常を行き来きできるふり幅の広い1枚に仕上がります。(出口さん)」 アースカラーの延長で使える、深くくすんだイエロー。カーディガン感覚で黒ブラウスを羽織り、カラーワンピースをオケージョンにも向く見た目に昇華。肌を隠しても涼しいコットン素材で夏じゅう紫外線対策もばっちり。
STYLIST 出口奈津子さん
着まわし企画を担当することも多く、長くフレキシブルに使えるアイテム選びのポイントを熟知。大人に似合うカジュアルルックに定評アリ。
派手すぎない

ドライな配色の中で柄ON柄

「例年以上にバリエが広がった柄を試すなら、グレーやベージュなどくすんだ色みがおすすめ。模様が主張しすぎず自然と抜けが出るため、たとえ上下でつなげてもくどく見えません。(塚田さん)」 細かいチェック柄を共通点に紳士とレディに一体感を。
STYLIST 塚田綾子さん
遊び心のあるアイテムを大人っぽく落とし込む、足し引きバランスは必見。服以外に、文房具やポーチなど雑貨類もかわいいものに目がない。
人気スタイリストがよく使う「見た目が良くなる」テクニック
整ったスタイリングの裏に隠された「こだわりのポイント」を取材。シルエットや配色、改めて覚えておきたい組み合わせの基本など、明日から役立つワザ。見た目だけでは分かりにくい、見た目が良くなるその理由をコーディネートの実例で解説。
【樋口かほりさん】

表紙や特集を担当する人気のGISELeスタイリスト。トレンドに流されないシンプルな服を基調としながら、新しさを感じさせるシルエット選びが得意。大人に適した甘さのさじ加減も絶妙。
ノースリーブとストール

「素肌の見える面積が増える夏に必要な、カーディガンやシャツなどの薄軽羽織り。さらにもう1つの選択肢としてストールに注目。服と同系色のストールをプラスすれば色っぽさが和らぐだけでなく、デザイントップスのようにも見えて感度も上がります」(樋口さん)
ビッグシャツは「たるみ感のあるもの」が好都合

「ビッグシャツこそ、そのシルエットを活かしてきちんと着ない。素材も、そでや肩が落ちるような、柔らかい素材感がビッグシルエットと好相性。まじめなイメージの白シャツこそ大胆に着くずしを」(樋口さん)
デニムは「前より後ろ」

「ヒップやパッチなど、服の中でもとくにデニムは後ろが絵になる服。右の写真はヒールまで赤いサンダルにしたり、ヘアにリボンを飾ったり。顔が見えないぶん「後ろ姿で飾る」のがポイント」(樋口さん)
シャツワンピースをデザインスカート風にアレンジ

「半分履いて巻きつけるだけ。まずはふつうにはおって腰から下のボタンだけとめ、上半身は脱いで腰位置でそでを結ぶだけ。即席でデザインスカートのでき上がり。もとがシャツだから派手になりすぎず、白Tなどシンプルなトップスが生きるいいアクセントに」(樋口さん)
キャップにはドレスで「カジュアルすぎない」

「スタイリングではあまりキャップは使わないのですが、ドレスなど極端な掛け合わせ用には手が伸びます。ある意味“ハズシ”がバレたくないので、色は必ずベーシックカラーで。ワントーンにすると、より大人っぽい。」(樋口さん)
正統派こそサイズ感でゆるめる

サイズ感をゆるめて羽織ることで、ストライプ柄もかしこまりすぎず自然体なムードに。「遠目から見ると分からない、くらいの細かい柄がおすすめ。ボリュームのあるロングスカートと合わせれば、動きや空気感が生まれて、リラックスした印象に。足元はナチュラルなサンダルで抜け感をプラス。ベージュのワントーンでまとめることで、シンプルなのにどこか女性らしさと品の良さが漂う、頑張りすぎない余白のあるスタイルが今の気分です」(樋口さん)
普通のボーダーこそ「メンズ」にチェンジ

女っぽく見せるため 手首の細さを引き立てるルーズなボーダー柄トップスを。「定番もサイズ感を変えることで今っぽく。ウエストにINしてできる腰まわりの余りも、メンズサイズならでは。デニムはラフに穿いて、袖をたっぷりたくし上げることで、力の抜けた雰囲気を演出。小物は黒で引き締めつつ、全体のバランスを調整」(樋口さん)
色より「配色で」キレイに見せる

「ベーシックカラーどうしでシンプルだけど上品、かつ華のある。そんな装いのキーカラーは「ブラウン・ベージュ」。コンパクトな白をつなぎ役に起用した3色でコーディネートすれば、ゆったりとした服どうしの組み合わせもルーズではなくエレガント。外側を一番濃い色にすることで、全体が引き締まるから、まろやかなカラーリングがぼやけない」(樋口さん)
きれい色に好相性なブラウンを新たな軸色に

「赤やイエローなどヴィヴィッドな発色のトップスは面積を少なめに・かつコンパクトにとり入れるのが基本。色味も発色をおさえたマットな赤なら、ダークカラーと合わせてもエッジが効きすぎない。コンパクト×ワイドでシルエットに差をつけて、濃い色どうしに抑揚を」(樋口さん)
ビッグアウターと短いパンツ

「すべて見慣れたアイテムで丈と幅だけを変更。例えば身近な存在である、白Tありきで定番アイテムの「サイジングの見直し」をはかることでシンプルスタイルの底上げを」(樋口さん)
ルーズなパンツにタックINしてスタイルよく

愛嬌のある丸みフォルムのニッカーズ風パンツ。「幅広めのぶかっとしたシルエットのパンツに、タンクトップなどの肌感のあるトップスをタックイン。メンズっぽいラフなパンツと、女性らしい肌見せがマッチし、腰位置が自然に上がって見えるので脚も長く見て、全体のシルエットにメリハリも出る」(樋口さん)
愛嬌のある姿に直結する「タックINしてロールUP」

「色自体に甘さを含んだピンクには多くを求めず、シンプルがいい。たとえばユニセックスなTシャツで。そのぶんデニムはレトロを意識。それだけでシンプルなのに「かわいい人」を印象づけられる」(樋口さん)
理想は白じゃなく「少しくすんだ透けない白」

「白デニムは色と厚みをチェック。ポイントは白のトップスと合わせても差のつく色み。厚みがしっかりとあるゆるい形のほうが、肉感が目立たず結果スタイルもよく仕上がります」(樋口さん)
「ウエスト」がしっくりくるかどうか

「デニム選びで譲れないポイント。基本的にぴったりとしたサイズが好み。中途半端にゆるみがあると、すそにかけてのシルエットにまで影響し、お尻も下がって見えてしまう。ウエスト=デニム姿全体にかかわってくるという点で重視」(樋口さん)
スニーカーで「物足りない」ときのストール

「たとえば白T+デニム+スニーカーだけじゃ、もの足りない!そこに首からストールを適当にたらすだけで、縦が強調され奥行きが生まれます。ストールは包まれたくなるボリューム感があるものを選んで。季節を問わず、あると心強いライトなニット。巻いたり、包んだり。カーディガン以上に操作しやすいストールで採用を。顔まわりがさみしいときにも重宝」(樋口さん)
あたたかな素材・キレイ色・肌のいい関係

「タンクトップの肌感はそのままに、ふんわりとしたやさしい質感のシャギーニットにチェンジ。明確にかわいい色は、失敗しない「デニムでカジュアルダウン」の法則にしたがうのが賢明。くすんだ白デニムとオフ白のニットストールで、フォギーなピンクの甘さを中和」(樋口さん)