「ミニマルで効率的なワードロ―ブ」が理想とはわかっていても、可愛い服があふれるいま、ついつい買い足してしまうことも。そんな物欲と理想との仲をとりもつ「色をしぼる」という発想。色数を少なくした結果、購入基準も装いも無駄なく整っていく、仕上がりからの逆算に役立つスタイルヒント集。
「見慣れた色なのに」目を引く理由
日々のスタイリングを支える定番色、白・黒・ベージュ。なんとなく合わせがちな3色が“無難”に終わらない、今すぐできるアイディアを海外ストリートのスナップからピックアップ。
「ALL白を引き締める」さりげない黒小物




アイテムやシルエットを問わず、合わせるだけで洗練されて見えるクリアな白どうし。バッグのショルダーやトングサンダルなど、直線的かつ華奢さのある黒小物をほんの少し効かせれば、さわやかなまま白1色の単調さをカバー。
膨張を防ぐグレーの陰影



ワイドパンツやフレアスカートなど、ふくらみのある白ボトムには、濃淡の表現が得意なグレーをON。黒ほどの重さがないため、強すぎないメリハリに。やぼったく転ばないよう、腰巻きやタイトなフォルムでとり入れるのが吉。
プリントTでキレイさを「ほどよくくずす」



気張って見えがちな白ボトムにこそあるといい、少々のほころび。キャッチーなTシャツが緊張をほぐし、大人っぽくも親しみやすく。白とセットなら必然的に品はキープできるから、個性のにじむ自由な選択を楽しめるのも魅力。
短い白黒が強さをアシスト




柔和な中間色ゆえ、ほっこりしやすいベージュボトムは、潔いショート丈トップスでハンサムさを向上。コンパクトなサイズによって、さらにくっきりと映る白黒がベージュのあいまいさを払拭。のぞくウエストが都会的なエッセンスに。
心地いい流れを生むグラデーション



ブラウンで濃厚さを足したり、アイボリーでよりまろやかにしたり。ベージュボトムを軸に同系色でまとめると、埋もれてしまうことなく簡単に統一感と奥行きが手に入る。ヘアはタイトにまとめて、マイルドな配色をすっきりと。
コントラストをつけない「深めのさし色」

ドライな渋色ジャケットの小脇にボルドーのバッグを抱えて、シンプルな黒の上下をクラシカルへと誘導。ダークトーンなら色を足しても浮かれることなく、冷静な面持ちに。ネックレスをたらした大胆なデコルテ見せが、色香をあと押し。
スタイリストが解説「モノトーンで違いを出すのがうまい人」
シンプルなのに洗練された雰囲気をかもすファッショニスタを観察。数百点のルックの中からスタイリストの目にとまったスタイリングにヒントを拝借。
(STYLIST MEMBERS)
渡邊恵子さん/USブランドにも造詣が深く、レイヤードに適したインナーも多数所持。 樋口かほりさん/表紙も担当するおなじみGISELeの看板スタイリスト。 岩田槙子さん/キレイめの中にモード感が漂うスタイリングに定評。 出口奈津子さん/リラクシーでカジュアルなスタイルに、好感度が漂う提案が得意。 船戸唯さん/ベーシックを軸に、辛口ムードが残るコーディネートに定評アリ。
メンズサイズの余白で動きをつける

“とりあえず着る”だけで洒落てしまうビッグシルエット。体が泳ぎ、余白部分がなびいて服に動きが出るため、色が単調でも退屈さがない。おへそ出しや黒の小物で締まりどころはつくっているのがポイント。(樋口さん)
シューズだけ色違い

パンプスを白にすることでセットアップの力が抜けて、黒の中に小さく白を配したバランスもかわいい。目立つ色を投入するとき、シューズだと無理して足したという感じがなく、自然なアクセントになります。(渡邉さん)
カジュアルなフォルムでドレスアップ

ツヤのあるシャツと、シアーなスカートという特別感のある質感のレイヤード。どちらも適当さのあるずるっとしたシルエットだからこそ、日常でも浮くことなく着られます。素材とフォルムの生かし方が秀逸。(出口さん)
ワンツーなのに気品が漂う

アイテムのサイズ選びが魅力的なスタイリング。コンパクトなTシャツと、ほどよくゆとりのあるスラックスを合わせたシルエットが巧み。タイトなヘアも効いて、アイテム数が少ない中でも高い完成度を感じます。(船戸さん)
Iラインをなごませるほっこりするもの

スリットスカートが印象的な、女性らしいタイトシルエット。そこに黒縁眼鏡やポロシャツ、白ソックスと、どこかなつかしげなアイテムをとり入れていて、上品さがありながらもチャーミングなルックです。(樋口さん)
上品さに直結するくるぶし丈

ルーズなファッショントレンドが続く中、ワイドパンツではなくあえてクロップトパンツにすることで洗練度が増して見えると思います。オーバーサイズのジャケットもだらしなく転ばず、大人っぽいハズしに。(渡邉さん)
ぼやけがちな白をクリアにする黒の縁取り

白で避けられない膨張問題。かつ気張ったミニ丈だけど、左のルックは黒のラインデザインで引き締めたり、右はマントのように羽織ったアウターが露出の軽減も担っている。囲うような黒でメリハリが出せます。(岩田さん)
オシャレをわかっている人

ヘアも含め、すべてをきちんと着ているスーツスタイル。単純なお仕事ルックにならないのは、ローライズですっきりさせた腰まわりや、太すぎず細すぎずなすそを甲までかぶせたパンツの美バランスのおかげ。(岩田さん)
大きめバッグでラフさをセーブ

薄手のシャツとショートパンツに、ずっしりとしたレザーバッグを添えることで重厚感を補填。暑くなり、装いが軽くなって心もとないときには、これくらいボリューミィなバッグを合わせるのが好バランス。(船戸さん)
涼しい季節にALL黒のインパクト

黒だけなのに重苦しさがない、肌見せ加減が絶妙です。このトップスはネックがかなりつまっていて、そでも長めの五分丈なので、Tシャツよりも均整のとれたルックスに。品もさわやかさもそなえられています。(渡邉さん)
正反対がちょうどいいバランス

ハードなデザインや、メンズライクなパンツとごつめのブーツに、正反対な甘めのパフスリーブをミックスすることで、お互いの印象が中和。インパクトの強いものどうしですが、ヴィンテージな趣を感じるスタイリングとして成立。(樋口さん)
サングラスでさし色が新鮮

赤みがかったサングラスが、モノトーンの美配色を維持しながらも、さりげないアクセントになっています。よく見るとバッグも深緑で、レザーパンツの強さがマイルドに。深みのある色ならさし色もトライしやすい。(出口さん)
「2色だけでオシャレ」のコーディネートルール
ワードローブに欠かせない身近な2色“白と黒”。安定感のある組み合わせだけど、淡白さゆえ、ともすれば地味なだけ、キレイなだけにもなりかねない。
そこで、GISELeスタイリストの中でも、とくに多くの白黒企画を手がける岩田さんにインタビュー。これまでのスタイリングをふり返りながら、こだわりのポイントや着方のテクニックを教えてもらいました。
(スタイリスト・岩田槙子さん) 女らしさとモード感をMIXしたキレイめスタイルに定評あり。数多くのモノトーン企画を担当してきた一方で、自身はヴィンテージライクな柄物をとり入れたスタイリングも大好き。
1.「上品であることが大鉄則」
「品があることは絶対にゆずれないし、スタイルもよく見せたい。そのために意識しているのは、見ていて心地のいい“流れ”です。白と黒は正反対な色なので、組み合わせたときに分断されて見えがち。そうならないための選びを心がけています」(岩田さん)
「白へとつなぐサイドスリット」

「この黒トップスは、サイドにスリットが入っているおかげで、フレアスカートとすんなりなじむ。実はシューズもタンの部分が白なので、スカートと色をリンクさせたことで別々の3点にまとまりが生まれ、統一感が増す結果に」(岩田さん)
「甲までかぶるスラックス」

「長め丈のパンツは、それだけで縦に流れのいいシルエットになるので重宝しています。足の甲までかぶる丈感なら、サンダルの肌感が収まり、リラックス感が悪目立ちしない役割も担ってくれる」(岩田さん)
「黒をちりばめて白を着る」

ヘアターバンやショルダーバッグを使って上半身にも黒を散らすことで、白トップスと黒パンツという上下の途切れを感じさせないようにしています。肩かけしたバッグのショルダーは、視線を縦に流す効果もあり。
2.「お気に入りの黒小物の数々」
スタイリングの調整役として、使い勝手のいい黒小物。なかでもコーディネートへのメリットが多くなる、「こうすればよかった」黒小物の使い方や組み合わせ方をき込み。
「Iラインを強めるサスペンダー」

「サスペンダーも縦の流れをつくれるうえ、トラッドなアイテムはどう転んでも品が出るので便利。黒は白よりも重みがあるぶん、このような白をベースにしたスタイリングには、黒を小さくとり入れるバランスが気分です」(岩田さん)
「締めて流すレースアップブーツ」

「レースアップブーツがずっと好き。つま先から足首に向かって視線が上に向いていく感じが気に入っていて、このスタイリングは、ブーツ→ベルト→シアーTシャツに仕込んだインナーへと、全体を小さな黒でつないでいます」(岩田さん)
「ロングブーツで2つの顔」

「ロングブーツも好みで、私自身がワイドパンツをよくはくため、ルックのようにすそのIN・OUTで違ったスタイリングを楽しんでいます。INスタイルは難しい印象があるかもしれませんが、黒どうしならまとまりがよく、足元に奥行きが生まれます」(岩田さん)
3.「偏愛なるVネック&かわいいもの」
「もう1つ欠かせないのが、Vネック。開けてキレよく素肌を出したり、インナーを合わせて詰めたりできる柔軟さがモノトーンと相性がいい。甘いデザインのアイテムも、気恥ずかしさなくまとえる黒白だからチャレンジでき、オシャレの幅が広げられる点も魅力」(岩田さん)
「上品な肌見せがかなうVネック」

潔く肌を見せてワイドフォルムの黒を軽量化。ふわりと揺れる質感に対して、Vネックからキレよく肌を見せることで、リラックスしたムードをよそいき顔に好転。
「白が落ち着くシャープな黒V」

インナーの白を見せることで、白と黒のコントラストが穏やかになる統一感のある見た目に。首元にもキレのいい白が加わることで、ぶかっとしたパンツもまとまりやすい。
「えりを足してももたつかない」

いつものクルーネックだと、ときには窮屈に見える場合も。中の黒をVネックにすることで、えりつきの羽織りを足してもすっきりとした見た目を維持できる。
「開襟でALL黒を軽快に」

「ALL黒を軽くするため広めに開襟。このスタイリングは質感にもこだわっていて、光沢や起毛素材をレイヤードすることで、黒1色の中に抑揚をつけました」(岩田さん)
「レイヤードの仕上げはリボン」

合わせたトップスも少しシアーな質感で差を明確に。おおえるビスチェのおかげで透ける素材のインナー問題も解決。
「なつかしげな小花のクロシェ」

ざっくりとしたフラワーモチーフのクロシェニットもモノトーンに落とし込み。黒のスラックスでシャープに引き締めれば、かわいい柄も大人っぽいバランスに着地。
「アクセサリーを好きなだけ」

ヘアや手元に散りばめた、いっぱいのアクセサリーも許容してくれる黒の懐の広さ。同時に、ヴィンテージ調の小物にも引けをとらない強さをまとえるのも黒の魅力。