心が風邪をひいてしまったら? 東大卒の夜遊び職人が教える「不調」との上手な付き合い方

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東大卒・会社員兼恋愛ライターという経歴を持つジェラシーくるみさんが、恋愛や美容、女性の生き方の悩みについて、自身の経験に基づいて答えていく不定期連載。


【ジェラシーくるみ】
東大卒の夜遊び職人。昼はしがない会社員。恋愛や美容、女性の生き方についてWebメディアを中心に執筆。フォロワーから寄せられた悩みに答えるPodcast(ジェラシーくるみのぶったぎり!)を配信中。初書籍『恋愛の方程式って東大入試よりムズい』をはじめ、仕事・恋愛・結婚・将来にモヤモヤを抱える25歳以上の生き方本「そろそろいい歳というけれど」も好調発売中。恋愛や人間関係を分析するツイートが人気で、Twitterフォロワー数は約6.3万人。


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心の風邪にも万能薬なし。ただし…


そういえば昨年、生まれて初めて夏風邪をひいた。朝起きて喉のヒリつきを感じてから、すぐに龍角散と蜂蜜を溶かした紅茶を常時飲むようにし、市販の風邪薬を飲んだが……だめだった。翌日には喉の痛み+咳+鼻水のトリプルコンボに見舞われた。


真夏にひどい風邪をひいたのは初めてで、戸惑いながら病院で検査を受けたが「ただの風邪」とのことだった。飲み歩いていたわけでも睡眠不足だったわけでもなく、ただ単に免疫が落ちていただけだ。

鼻のかみすぎでガサガサに剥けた鼻を保湿し、ゴミ箱にゴールし損ねたティッシュの山を見ながら思ったことがある。世の中には「風邪のひきはじめ」に飲む風邪薬が多々あるが、風邪の気配を喉奥に感じたときにはもう手遅れではないだろうか。経験上「風邪かも」と思ったその日から、どう足掻こうが、喉の痛み、咳、鼻水を一巡する羽目になる (私の風邪は大抵喉から)。


風邪の症状を入口で止めようと躍起になるより、これから発症するであろう小さくも鬱陶しい痛みや不便さに備えて準備をしておく方が賢いのかもしれない。対策を施した後は通り過ぎるのをただ待つだけ。その点で、風邪は台風に似ている。痛む喉や鼻を保護しながら、自分の免疫で自然治癒するのを待つしかないのだろう。



「心も」たまに風邪をひく


風邪のような、「病気ではないが明らかな不調」モードに入るときがある。心の不調が数週間にわたるようであれば、「風邪じゃないかも」と疑って専門家に受診すべきだが、私の心の風邪は数日で過ぎ去る。未着手のタスクや憂慮がふつふつと湧き上がってきて、自分の心にまとわりつく。


思い通りにいかない日々に嫌気がさしたり、他人と比較して落ち込んだり、誰かの一言に心を削り取られたり、それがホルモンの動きや天気や気圧とあいまって、心が「不調モード」を患うので非常に厄介だ。

凹んだときは、落ち着いて自分を客観視すべきだと言われてきた。紙に今の状況や気持ちを書き出して、言語化し、整理し、現状分析をする。過去に何度も実践してきたが、この方法は悩みの解決策を探るときには有効でも、心の風邪にはなかなか効かない。


心の調子がよくないときには、自分を見つめること自体がしんどいからだ。自分の気持ちから目線を剥がせず、思考がぐるぐるするばかりで苦しい。しかも、心の「不調モード」時はたいてい自分のことが嫌いだ。嫌いな人を分析し続けるのは愉快な作業ではない。




「ひたすら寝る」という旧来の対処法も万能ではない


心が風邪をひいているときは、ぐっすり寝ても心が重いまま。一日に13時間も寝た日には、ああ時間を無駄にしてしまった……とより深い自己嫌悪に苛まれてしまった。これでは逆効果だ。そもそも睡眠中は、体は回復しているが、脳は脳で記憶の整理作業(定着や消去)を行なっているらしく、むやみやたらに睡眠時間を長く取ればいいわけではなさそうだ。

体を休めすぎるのにも限界を感じ、脳や心を休めようと「ぼーっとする」ことを試みたが、これも難しい。森の中でもあるまいし、いつも暮らしている部屋でぼーっとするのは結局自分の思考や悩みと近接することであり、嫌いな自己から逃れられない。近所の公園に出向いて緑を摂取しようかとも思ったが、着替えたり日焼け止めを塗ったりすること自体が面倒くさく、玄関のドアが魔界への扉のように禍々しく感じられて無理だった。




「ながら入浴」のすすめ


自宅から一歩も出ずに、心の風邪をなるべく「ペインレス」にやり過ごすためにはどうすればいいかと苦慮した結果、最近実践しているのが「ながら入浴」だ。


脳と体に適度な負荷と刺激を与え、「何かをしながらリラックス」することで、神経を内ではなく外に向かせるのだ。ただ入浴をするだけでは手持ち無沙汰すぎて、悩みが心の底でぐるぐるし始めるから。一人暮らしを始めて以降は入浴の習慣がなかったが、数年ほど前から友人に連れられて日本各地の温泉に行ってみて、「温かいものに体をつけること」の効能を再認識した。


家での入浴時にはバスオイルや発汗剤など、その日の気分で何かしらを湯に入れる。お湯に体をつけると、浮遊感や開放感とともにじわじわと血管が開いてくるのを感じる。

シンプルに気持ちがいい。


そして、心がずーんと沈んで何も手につかなかった休日でも、「まあ、ちゃんとお風呂に入って汗かいたし」とかすかな達成感が残るのも大きなメリットだ。私的「お風呂セット」はスマホとKindleと2Lペットボトルの水の3点だ。お風呂に体を沈めた後は、芸人さんのラジオやお気に入りのpodcastをかけ、数分おきに湯から出て水分補給を行うだけ。


熱が自分の深奥にしみ入るのを感じながら、ネタやエピソードトークにくすくすしたり、言い回しに感心したりを繰り返していると、暴れ散らかっていた感情が徐々に落ち着くのを感じる。体に水圧や熱の負荷をかけ発汗させ、脳に外的刺激を与え続けることで、「不調モード」の自分から距離をとり、自分に向き合わずに済む。


「聴きながら入浴」に飽きたら、防水のKindleをお供に「読みながら入浴」に切り替えればいい。お風呂から上がって体を洗うときも、スマホから何かしらのコンテンツを流し、とにかく耳に集中しながら洗身ルーティーンを終わらせる。(音が聴こえにくいときは浴室の壁にわざと反響させるとよい)




気をつけていても「不調モード」は訪れる


このようにして、なんとか自分から視線を外し、数日耐え凌ぐと、徐々に気持ちが上向いてくる。結局「不調モード」のたいていの場合、悩んでも仕方ないことに悩み、考えても和らがない痛みに敏感になっているのだ。


風邪(ウイルス性の風邪)を治す薬がないのと一緒で、心の不調にも一発で効く対処法など存在しないのだろう。どんなに気をつけていても心の不調モードは訪れる。そのときはまた、心と体を温めながら自分の免疫力を信じ、時間が過ぎるのをじっくり待つだけだ。



(25歳を過ぎたら読む本)
≫そろそろいい歳というけれど

人生の進捗がないのは私だけ? 25歳を過ぎたあたりから言葉にできない不安や焦りに悩まされ、年中無休でモヤモヤするアレの正体について。ジェラシーくるみさんが働く女性の根源的な悩みに切り込み、不妊治療や資産運用のいろはも詰め込んだ全アラサーのための一冊。