間違ってるから効果がない? 美容液に匹敵する「エモリエント」の使い方

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「ワセリン」の正しい選び方・使い方

「良い」と耳にする一方で、安さだけで選んだり、使い方を間違えたりして、実はその効果を十分に引き出せていないワセリン。「良かれと思って使っていたのに、逆に肌トラブルの原因になっていた…」そんな隠れた落とし穴を回避し、ワセリンの効能が存分に発揮され知識と正しい使い方を解説。(本記事の内容は効果を保証するものではなく、効果の感じ方には個人差があります)



【エモリエントとは
収れん剤、保湿剤などの分類で言うとワセリンはエモリエント。「皮膚軟化剤」とも呼ばれ、医療分野では湿疹や乾癬などの治療にも使われているもの。皮膚表面に保護膜を作り、水分の蒸発を防いで肌のうるおいを保ち、柔らかさを維持する働きを指します。その多くは油性成分で、ワセリン・植物オイル・シアバター・スクワランなどが代表的。近年はクリーム・乳液・バーム・ヘアケアなど、多彩な化粧品にも幅広く配合され、日常のスキンケアに欠かせない成分。




「スラギング」の方法は?

海外セレブの間で広まり、tik tokでも話題になった「スランギング」は夜のスキンケアの最後に、ワセリンを顔全体に「薄く塗る」美容法。皮膚科学誌『Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology』に掲載された研究など、複数の論文によると、ワセリンが強力な保湿バリアとなり、肌の水分蒸発を防ぎ、肌の水分量を高めると言われています。


ただし注意すべきはあくまで「薄く塗る」こと! 量を増やしたところで保湿効果は同じ、逆に塗りたくっては肌が余分な皮脂や細菌を放出するのも止めてしまうので、それが吹き出物につながってしまうのです。




ワセリンと組み合わせたい成分

ワセリンは単体でも高い保湿効果を発揮しますが、ヒアルロン酸やナイアシンアミドといった成分と組み合わせることで、その美容効果がさらに高まるとされています。


ナイアシンアミドは、肌のバリア機能を高め、コラーゲン生成を促す働きがあることが多くの研究で報告されており、これらの美容成分を配合した化粧水や美容液を塗布した後にワセリンで蓋をすることで、肌の水分を逃さず、美容成分を閉じ込める。この方法で、肌の内側から潤いとハリを保つ効果が期待できます。

スラギングの順序

1.洗顔・保湿
夜ぬるま湯と低刺激のクレンザーで優しく洗顔し、水分を軽くタオルで押さえるように拭き取り。


2.美容成分の塗布
ヒアルロン酸やナイアシンアミド配合の化粧水や美容液を塗布。


3.ワセリンでフタをする
豆粒大のワセリンを手のひらで温めて溶かし、顔全体に薄く均一に伸ばす。


4.就寝
そのまま就寝し、翌朝いつものように洗顔。




正しく知っておきたい「4つのグレード」

ワセリンは単なる保湿剤ではありません。実は、不純物の量によって4つのグレードに分かれており、肌質や用途に合ったものを選ばないと、せっかくの美容効果が半減したり、肌トラブルにつながったりする可能性も。



黄色ワセリン

最も純度の低いワセリンで、精製度が低いため黄色みを帯びているのが特徴。安価で手に入りやすい反面、不純物が多く含まれているため、人によっては肌に合わない場合も。「手や体など広範囲に使用」するのに向くワセリン。顔やデリケートな部分への使用は、肌トラブルを招く可能性があるため避けた方が無難。



白色ワセリン

黄色ワセリンをさらに精製したもので、医療用としても使われる一般的なワセリン。不純物が少ないため、黄色ワセリンよりも肌への刺激が少ないとされています。純度は高いものの、より敏感な肌には刺激となる可能性もわずかにあり。



プロペト

白色ワセリンよりもさらに精製度を高めた、ほぼ無色透明のワセリン。不純物が極めて少ないため、非常に肌に優しく、医療機関でも処方されることが多いタイプ。赤ちゃん、敏感肌、アトピー肌の人向きで、顔や唇、目元などデリケートな部分に。



サンホワイト

最も純度が高いとされる最高グレードのワセリン。不純物がほぼ完全に除去されているため、肌への刺激が限りなく少なく、乾燥や敏感肌ケアに特化。最高純度。極度に敏感な肌、アレルギー体質、顔や目元など、特に優しいケアを必要とする部分に。




ワセリンの美容効果(9選)

あなたのワセリン選びは間違っていなかったとしても、その使い方を知らなければ意味がありません。ここでは、科学的根拠に基づいたワセリンの9つの効果をご紹介。



1.目元の小ジワ改善

目元の皮膚は非常に薄く、乾燥による小ジワができやすい場所。2018年に米国ウェイクフォレスト大学で行われた研究によると、毎晩ワセリンを塗布した被験者の小ジワの見た目が18%減少し、肌の水分量が22%増加した、ということも確認。


またレチノール製品との比較では、ワセリン使用グループの刺激報告が0%と、安全性が非常に高いこともわかっています。保湿効果とバリア機能の改善により、目の周りの肌にふっくらとしたハリを与え、乾燥による小ジワが原因のクマの印象を軽減する補助的な役割としても。



2.手の保湿とシワ改善

手は年齢が出やすい部位の一つ。ここでもワセリンの防水バリア効果は手のシワ改善にも適任。カリフォルニア大学が2013年に行った研究では、1日2回のワセリン塗布により、細かいシワの見た目が22%減少し、長期使用で肌の弾力性が約11%向上することが確認され、水仕事が多い方や、乾燥で手が荒れがちな方にとっては、まさに救世主。



3.唇の保湿

ワセリンの圧倒的な保湿力は、唇の乾燥にも効果を発揮。唇は皮膚も薄い部位でワセリンは、唇の水分蒸発を防ぎながら、自然な皮膚呼吸を維持。


2020年のトラン研究所による比較試験では、ワセリンの保湿効果が平均6.4時間持続し、ワックスやオイルベースのリップ製品よりも優れていることが証明されたという結果も。また、2021年の研究では、年齢とともに唇が薄くなるのを42%も抑制する効果も確認。



4.かかとのひび割れ改善

硬くひび割れやすいかかとにもワセリンは有効です。ワセリンが角質層の隙間に浸透し、バリア機能を回復。2021年にアイルランドの大学が行った研究では、就寝前にワセリンを塗って靴下で覆う方法(密封療法)で、患者の78%に有意な改善が見られたという結果も。




5.爪の保護

爪の乾燥は、もろさやひび割れの原因に。ワセリンは爪やキューティクルに水分を閉じ込め、乾燥によるダメージを防止するのにもうってつけ。2009年の研究では、定期的な使用で爪の水分保持が向上しもろさが減少することが確認されており、とくに水仕事の前に薄く塗っておくことで、洗剤などによるダメージ予防にも。




6.肘・膝の黒ずみとシワ改善

肘や膝の黒ずみは、摩擦と乾燥が原因です。2010年のウェイクフォレスト大学による研究では、ワセリンの定期的な塗布により、摩擦による色素沈着の進行を約23%抑制する効果が報告されています。




7.傷の回復促進

小さな切り傷や擦り傷の治癒を早める効果もあります。ワセリンが傷口を湿潤な状態に保ち、細胞の活動を助け、外部からの汚染物質や細菌を防ぐ役割に。2014年の研究では、ワセリンは抗生物質軟膏と同等の治癒効果が確認されており、アレルギー反応のリスクが少ないことが大きな利点。




8.やけどの回復促進

ワセリンは、軽い火傷部位を適切な湿潤環境に保ち、治癒を促進。2012年のパキスタン医学協会が発表した研究では、ワセリンを使用したグループの平均治癒日数が薬を使用したグループより約25%早かったという結果。




9.花粉症予防

意外ですが、ワセリンは花粉症の症状を軽減する効果も。鼻の周りや鼻の内側に薄く塗るだけで、物理的なバリアを作り、花粉やアレルゲンが鼻粘膜に触れるのを防止。2018年の研究では、ワセリンを使用したグループの症状の重症度が31%も減少したという報告もあり。




要注意! ワセリンのデメリットと正しい使い方

ワセリンはその高い効果から「万能」と思われがちですが、大きく3つのデメリットと注意点が。これらを理解せずに使用すると、かえって肌トラブルを招くことにも。



1.不純物による肌への影響

純度の低いワセリン(黄色ワセリンなど)には不純物が含まれていることがあり、これが肌に合わない場合、肌荒れやかゆみを引き起こす可能性が。また、日中の使用時に紫外線の影響を受けやすくなるため、純度の高いワセリンを選び、日焼け止めを併用することが重要で。




2.毛穴詰まりによるニキビの悪化

ワセリンは水分を閉じ込める力は非常に高いですが、肌の油分が過剰な状態では、毛穴に蓋をしてしまい、ニキビを悪化させる可能性。皮脂の分泌が多いオイリー肌の方は、顔全体に厚く塗ることは避け、乾燥が気になる部分にのみ薄く塗るようにして。




3.必要な成分は補給できない

ワセリンはあくまでも肌に「蓋をする」ことで、水分蒸発を防ぎ、肌本来のバリア機能をサポートするもの。それ自体にコラーゲンやヒアルロン酸、ビタミンなどの美容成分を補給する効果はなし。そのため、化粧水や美容液で肌に水分や栄養を与えた後に、ワセリンで蓋をすることが最も効果的です。




ワセリンを「正しく選び・正しく使う」

見てきたように、ワセリンは単なる保湿剤ではなく、美容と健康の多くの悩みを解決する優れたアイテム。高純度のワセリンを選び、肌質に合わせた使い方を徹底することで、肌トラブルを防ぎ肌の健康な肌の状態を保ちます。高価な化粧品に失望してきた人も、ワセリンに立ち返ってみるのも良い選択。流行に左右されず、何十年も愛され続けてきた、それだけの理由があるワセリン。正しい知識をもとに選び、部位に沿った使い方をすれば、ワセリンの驚くべき力を実感できるでしょう。