素材や風合い、色、編み方など。豊富なバリエーションが楽しめるニットは、お手入れの仕方も千差万別。冬の相棒を長く大切に着たいから。おさえておきたい基本のケアや洗い方・保管のコツを、洗濯&ニットのプロたちに徹底調査!(取材した方々のプロフィールは記事末にあります)
セルフケアで失敗しないために
【ニットの洗濯・乾燥方法の基本】
何げなく行っている洗濯が、実はニットに負担をかけている可能性が。素材を傷めにくい洗いから乾燥までの一連の手順をベースに、自宅で行うケアでも風合いを保てるコツをご紹介。基礎から固めてしっかり対策を。
CHECK01
そもそもニットにはどんな種類がある?
ニットとひと口にいっても素材は多種多様。加えて編み方の違いによってもさらに種類は増加。手持ちのニットに最適なお手入れ方法を見極めるためにも、まずは定番素材と編み方の特性をあらためて知るところからスタート。
ー【編み方】ー
☑ハイゲージ
「細い糸で細かく密に編まれたハイゲージは、元々目がつまっているので洗濯しても縮みにくく、比較的手がかかりません。ハンガーにかけても変形しづらく、毛玉もできにくいです」(古田さん)
☑ローゲージ
「ざっくりと編まれた目の粗いニットは洗いも乾燥も大変。洗濯すると水を吸って重くなるうえ、縮みも形くずれもしやすい。とくに混紡素材は縮みぐあいが読みにくいので注意してください」(永松さん)
ー【素材】ー
☑動物性天然繊維
「弾力に優れたウール、極上の肌ざわりのカシミヤ、特有の起毛感のアルパカなど、風合いや保温性が魅力。一方で虫食いやカビの被害を受けやすく、保管や洗濯には注意が必要という弱点も」
☑植物性天然繊維
「綿や麻などの植物性繊維は熱や洗濯に強く、吸水性にも優れているのが特徴。チクチクしない抜群の肌ざわりで、縮みにくくお手入れもしやすい。綿はサマーニットに多用されています」
☑化学繊維
「天然繊維と比べると風合いなどは劣るものの価格は圧倒的に手ごろ。保温性が高くウールに似たアクリル、丈夫でなめらかなポリエステル、軽量かつ丈夫なナイロンを三大合成繊維と呼ぶ」
☑混紡(混合)素材
「2種類以上の繊維を混紡した素材。異なる特性の天然繊維と化学繊維を混紡すれば、それぞれのメリットをいいとこ取り。耐久性やコスト面で優れたものが作れます」(以上丸茂さん)
CHECK02
ニットは何回着たら洗うのが正解?
☑ケアをすれば3~4回は問題なし
「そもそも汚れにくいので、着るたび洗う必要はありません。肌に直接ふれず、汚れもついていなければ、3~4回に1度くらいの頻度でOK。そのぶん着用後のブラッシングや陰干しはしっかり行ってください。逆に短時間の着用でも汗をかいた場合や食べ物などのにおいがついた場合は、放置すると汚れのもとが吸着するので、そのときは洗濯を」(丸茂さん)
CHECK03
洗う前に洗濯マークをおさらい
「洗い方」を示す基本記号はおけのマーク。家庭で洗濯できるものにはすべてこの表示が。マークの中の数字は洗濯に使う水の上限温度、下に引かれた横線は洗濯の強さを意味したもの。下線のないものは通常の強さで、下線が1本なら弱く、2本なら非常に弱く洗うように注意が必要。
おけにバツ印がついたマークは家庭洗濯NG。水洗い不可のため、基本的にはクリーニングに出すのがベスト。ウールやカシミヤなど、デリケート素材のアイテムでよく見る表示。
水温40℃を限度に手洗いであれば家庭で洗濯可能。ウォッシャブルニットはこの表示のものが多い。オシャレ着用洗剤の使用が推奨ですが、素材を確認して適した洗剤選びを。
水温40℃を限度に「標準」コースで洗濯機洗い可能。下線が入っている場合は、オシャレ着用洗剤を使ってデリケートコースで洗いましょう。洗濯ネットの使用も忘れずに。
☑注意したい「漂白記号」の意味
「漂白についての表示は三角のマークをベースに、塩素系漂白剤と酸素系漂白剤が使えるかどうかが記載されています。洗濯表示上は酸素系漂白剤の使用が可能であっても、ウール素材には粉末(アルカリ性)タイプは厳禁。液体(中性)タイプを使うようにしてください」(丸茂さん)
塩素系および酸素系漂白剤を使用して漂白可能。塩素系は漂白力が強いため、基本的には綿やポリエステルなど、強い繊維の白い服向きです。
酸素系漂白剤は使用可能、塩素系漂白剤は使用禁止。酸素系でも粉末(アルカリ性)の場合、ウールは変形や変色の恐れがあるため使わないで。
「漂白の仕方」を示す基本記号の三角にバツ印がついたマークは、塩素系および酸素系漂白剤の使用は禁止。シミ抜きはプロにまかせましょう。
CHECK04
洗う→乾かすまでの流れをチェック!
1.まずはブラッシングで汚れを除去
「ブラシをかけて、ニットの表面についているホコリやチリをとり除くところから。毛のやわらかいものなら生地を傷めずにさっと汚れを落とせるので、馬毛ブラシは万能だと思います。上質なニットには豚毛がオススメ」(永松さん)
2.たらいにぬるま湯を入れ中性洗剤をとかす
「洗面台やたらいに30℃くらいのぬるま湯をためて、中性洗剤を入れてとかします。このとき洗剤を多く入れすぎたり、十分にとかしきらないうちにニットを入れないように注意してください。洗剤の量は少なめで十分」(山澤さん)
エコベール デリケートウォッシュ(おしゃれ着用洗剤) 750mL オープン価格/ジョンソン ウールやシルクなどデリケートな素材にも最適。植物由来の洗浄成分で汚れをしっかり落とし、衣類の縮みや色あせも防げる。
3.大きく畳んだ状態でニットを入れ5~6回押し洗い
「中性洗剤をとかしたぬるま湯にニットを大きめに畳んだ状態で入れて、1~2分、汚れがひどい場合は4~5分つけ込みます。その後5~6回やさしく押し洗い、または持ち上げ洗いを。強くせず、こすらないことが重要」(山澤さん)
4.軽くしぼってぬるま湯で1回すすぐ
「洗い終えたらシワにならないようにニットを軽くしぼります。たらいのぬるま湯を新しいものにかえて、洗ったときと同じようにやさしくすすぎ洗い。繊維の中に洗剤が残らないよう、しっかりすすぐことがポイント」(永松さん)
5.柔軟剤をといたぬるま湯につけ込む
「柔軟剤もしくは髪用のトリートメントをぬるま湯に適量入れてとかし、すすぎが終わったタイミングで5~10分つけ込み。これによって、ニットの風合いを保つとともに、うるおいを含ませて静電気を防ぐ効果も」(古田さん)
SUBLI ファブリックコンディショナー(柔軟剤) 450mL 2,970円/VITAL MATERIAL 天然由来成分90%以上配合の柔軟剤。ウールやシルクにも使用可能。衣類をふんわり仕上げるだけでなく、静電気の発生も抑止。
6.ネットに入れ洗濯機で30~60秒脱水
「柔軟剤につけ込んだあと、すすぎはせず、水がたれてこない程度に軽くしぼります。目の細かい洗濯ネットに畳んで入れて、洗濯機で30~60秒ほど脱水がけ。しぼるときは、シワがつかないように注意を」(古田さん)
フレディ レック・ウォッシュサロン ランドリーネット 2枚セット 1,628円/藤栄 目の粗いハードタイプと、細かいソフトタイプがセットになった洗濯ネット。けばなどのつきやすいニットには、ピンクのソフトタイプを。
\ATTENTION!/
大事なニットはタオルで脱水するのがベター
「基本的には1分以内の脱水であれば洗濯機を使用して問題ないですが、高価なものなどとくに大切なニットは、バスタオルを使った脱水がオススメ。バスタオルでくるみ、軽く押して水分をとれば、ダメージなく脱水できます」(永松さん)
7.平たい場所に広げて乾かす
「脱水が終わったら、形くずれしないようにきちんと形を整えてから日陰で平干し。直射日光による変色を防ぐために必ず陰干しを。ハイゲージなど伸びにくいものならハンガー干しでもいいですが、基本的には平干しが安心」(古田さん)
\LECTURE MEMBERS/
OKULAB
永松修平さん
洗濯機のエンジニアとして、長年クリーニング機器やコインランドリー機器の開発に従事。現在はコインランドリー“Baluko Laundry Place”、洗濯代行“Laundry Out”を手がける。
ヤマサワプレス
山澤亮治さん
店頭に並ぶ前の洋服のアイロンプレスや検品を手がけアパレル業界を陰で支える一方で、洗濯代行“ウォッシュフリーダム”を経営。アイロンがけのプロとして講演活動も行う。
レジュイール
古田陽祐さん
1977年創業、高級クリーニング店「レジュイール」のオーナー。欧米で学んだ技術を基に、独自のノウハウを生かしたケア方法がファッション関係者からの絶対的信頼をほこる。
繊維製品検査機関
丸茂征也さん
クオリティ確保や向上をめざし、化合繊、綿などを含む繊維製品全般にあらゆる検査を行い、繊維産業の支援に務める。ウールマークの品質試験およびその証明などにも携わっている。