「8週間で11歳若返った人の話」に学ぶ「体の時計の遅らせ方」

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8週間で11歳若返った人の話

もし「老い」を巻き戻せるとしたら?


2021年、米国で発表されたある研究は、そんな夢のような話に科学的な根拠を与えました。機能性医学研究者の Kara Fitzgerald博士 らが行った小規模な臨床試験では、たった8週間の生活改善プログラムで、参加者の「生物学的年齢」が平均3歳、そして最も大きな変化を示した人は約11歳も若返ったという報告。

今回ご紹介するこの研究が教えてくれるのは、特別な治療法がなくても、日々の習慣を整えるだけで体の時計を遅らせる「可能性がある」という希望。(※ただし、本研究は小規模な初期段階の試験であり、全ての方に同じ効果が保証されるものではなく、結果の再現性には今後の検証が必要です)


(注意点)

介入群は21人中18人前後が完了した小規模試験。平均3.23歳の若返りが主要アウトカムであり、最大11歳若返りは著書やインタビューでの報告例。論文本文には直接記載されていません。小規模試験のため、すべての人に同じ効果が現れるとは限らず、再現可能性は今後の研究で検証される段階。持病や体調に応じて、食事や運動を大幅に変える前には医師に相談することが推奨されます。



「生物学的年齢」とは?

ここで言う「生物学的年齢」は、暦の上の年齢とは違い、私たちの細胞がどれくらい古びているのかを示す指標。研究チームはエピジェネティッククロック(簡単に言うと細胞が教えてくれる本当の年齢のこと。例えば戸籍上は35歳でも、生物学的年齢は28歳ということも)を用いて計測。これは、見た目の若さや慢性疾患リスクとも深く関係しているとされ、単なる美容ではなく健康寿命に直結するテーマ。




8週間の「若返り」プログラムで行ったことは?

参加者に課されたのは特別な医療行為でも、高額な美容医療でもなく、むしろ私たちが「当たり前」と思っている生活習慣を徹底的に見直すということ。


介入群は21人中18人前後が完了した小規模試験。平均3.23歳の若返りが主要アウトカムであり、最大11歳若返りは著書やインタビューでの報告例。論文本文には直接記載されていません。小規模試験のため、すべての人に同じ効果が現れるとは限らず、持病や体調に応じて、食事や運動を大幅に変える前には医師に相談することが推奨されます。



①まずは食事

葉酸を多く含むブロッコリーなど、色鮮やかな緑黄色野菜が中心。料理にはオリーブオイルやアボカドといった良質な脂質が使われ、風味はウコンやローズマリーなどのスパイスやハーブを使用。

一方で砂糖や精製された炭水化物、加工食品は大幅に制限。白いパンや白米は控えめにして体を「糖化」させる要因を徹底的に減らす。こうして、体内で炎症や老化を進める物質を抑え、細胞の修復を助ける食材を中心とした食生活に。




②次に運動と睡眠

週に5回、30分ほどのウォーキングなど中程度の有酸素運動を日課に。激しい筋トレではなく、持続可能でストレスにならない程度の運動を重視。夜は毎晩7時間以上の睡眠を確保し、寝る前のブルーライトや刺激物を避けることで、体の修復スイッチを最大限に活かすという習慣を徹底。




③瞑想でストレス管理

ストレスは目に見えない老化の加速因子。穏やかな呼吸一つが細胞レベルの回復に影響を及ぼす可能性があるとの考えから、瞑想や深呼吸といったシンプルな方法で、心と体を落ち着ける時間を毎日取るよう指示。




④サプリメントの併用

このほか、葉酸やビタミンC、プロバイオティクスといったサプリメントも併用され、腸内環境の改善とDNA修復をサポート。

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こうして8週間後、参加者たちのDNAクロックは平均で3歳以上若返り、なかには11歳分もの年齢を巻き戻したという例も。ただし、これはごく少数の被験者を対象にした短期的な試験で、ハーバード大学本体が公式に発表した大規模研究ではなく、再現性の検証はまだこれから。よって万人に保証するものではない点には注意が必要。




研究結果をもとにした「8週間」プロジェクト

「8週間で11歳若返る」という結果は特別なサプリや高額な治療ではなく、日常の習慣を整えるだけで達成されたもの。つまり、誰にでも再現可能なチャンスがあるということから、この研究結果をベースしつつ「今日からできること」の具体的なアクションプランをご紹介。



①食事
腸を整える「若返りプレート」を意識

野菜・きのこ・豆類・発酵食品をたっぷりと摂取する食生活にすること。そして朝食のパンをサラダに変えてみるなど、精製された糖質(白米・白いパン・うどん・白いパスタ・アイスクリームなど)や加工食品(ハム・ソーセージ・スポーツ&エナジードリンク・ポテトチップス・冷凍食品などインスタント食品全般)の摂取を減らすこと。



(具体的な食事プランは?)

AGEs(週末糖化産物)が多く含まれている食品を避けることが基本。腸内環境が改善し、炎症が減り、肌のハリ・ツヤや体内の修復力がアップ。なお「AGEs」についてはこの記事の後半で解説。



朝食

・オートミール(全粒オーツ)/食物繊維が豊富で血糖値の急上昇を防ぐ
・ベリー類(ブルーベリー、ラズベリーなど)/抗酸化作用が強い
・ナッツ(アーモンドやくるみなど)/良質な脂肪とビタミンE



【昼食】

・サラダボウル(野菜たっぷり、鶏胸肉、アボカド、レモンドレッシング)/低GI、抗酸化作用
・玄米または全粒粉パン/血糖値を安定させる
・スープ(具だくさん、蒸し野菜)/AGE生成を抑える調理法




【夕食】

・煮魚(サバ、鮭など)/健康的な脂肪とオメガ3脂肪酸
・蒸し野菜(ブロッコリー、カリフラワー)/抗酸化作用
・豆類(レンズ豆、ひよこ豆)/植物性タンパク質、食物繊維




②運動
「20分×週5回」の軽い有酸素+週2回の筋トレ

ハードなジム通いは不要。ウォーキング、軽いジョギング、ヨガなど、息が弾む程度を続ける。

(お勧めはスクワット)


また自宅で簡単にできるスクワットは、週2回/15-20回×3セットでも非常に効果的。習慣にすると、筋肉量増加と骨密度向上により姿勢が美しくなり、成長ホルモンと女性ホルモンの分泌促進で肌のハリ・ツヤが向上。下半身の引き締まりとヒップアップ効果で美しいボディラインを作りつつ、血流改善によりむくみの解消と肌色向上にも効果。


(方法)

足を肩幅に開きつま先をやや外向きにし、膝をつま先方向に曲げながら腰を真っ直ぐ保ち、太ももが床と平行になるまで腰を落とす。回数よりも正しいフォームで行うことが大切。




③睡眠
7時間睡眠+23時までに就寝を目標に体内時計をリセット

就寝90分前から照明を落とし、スマホを見ない。寝室は20℃前後を保ち暗めに。また、就寝前に温かいハーブティーや白湯を飲む。簡単なストレッチか深呼吸で副交感神経をオンにするのもおすすめ。

(期待の効果)

若返りホルモン=成長ホルモンが最も多く分泌されるのは「就寝時」。つまり睡眠不足は老化を早めてしまいます。しっかりとした睡眠をとることで、肌のターンオーバーや細胞修復も活性化。


国際学術誌「Nature」に掲載された論文によると、慢性的な睡眠不足がテロメア(≫解説はこちら)の短縮を加速させるという研究結果。テロメアとは、染色体末端にある「繰り返し配列をもつDNA」と、それに結合するタンパク質群から構成され、染色体の損傷防止や細胞老化の抑制に重要な役割を果たしているもの。細胞分裂のたびにテロメアは少しずつ短くなり、これが細胞の寿命や老化と密接に関係。




④ストレス管理
1日5分の「マイクロ瞑想」+自然に触れる

(具体的な研究例)

重度の高血圧症の男女48人を集めて(1)毎日瞑想を行い、あとは基本的な健康教育の授業を受けるだけのグループ(2)厳密な減量や減塩のプログラムを受け、定期的な運動を行うなど厳しい生活改善に取り組むグループの2つに分けた。


4か月後、2つのグループのテレメラーゼの量や血圧などを測ると、両グループともテロメラーゼが増えて血圧が改善。つまり「両者の間に数値の差がなかった」ことが報告されており、これは瞑想が厳しい生活改善プログラムと同じ効果をもたらした、という結果に。


(実践例)

ポイントは「呼吸に意識を向けること」。朝起きたらベッドの中で目を閉じて3回深呼吸し「今日の私にとって大切なこと」を1つ思い浮かべ、その時の気持ちをそのまま受け入れる。同じく夜はベッドに入る前に目を閉じて3回深呼吸。今日の良かったことを3つ思い浮かべる。この習慣だけでも、ストレス軽減とテロメア保護に効果的。




「8週間プラン」を始めるなら

8週間のゴールを設定し「〇歳若返る」という数字を自分の目標に置き換え、日々の変化を楽しみながら行うこと。そして、一気に完璧を目指さずに、まずは「夜更かしを1回減らす」「ランチを玄米に変える」など小さな一歩から始めることが継続につながる秘訣。肌の写真を撮る、体調をメモするなど、成果を記録してモチベーションを保つのもお勧め。


この研究のお話は「老化は一方通行ではない」という希望を示したもの。8週間後、鏡の中で少し引き締まった顔、よく眠れてスッキリした朝、自分の体に対する自信を感じているかもしれません。「私もやってみよう」そう思った瞬間から、若返りはすでに始まっているのです。



(出典)
Fitzgerald KN et al. Potential reversal of epigenetic age using a diet and lifestyle intervention: A pilot randomized clinical trial. Aging (Albany NY). 2021;13(7):9419–9432.
Kara N. Fitzgerald. Younger You. Hachette Go, 2022.




AGEsってなに?

AGE(Advanced Glycation End-products)は、タンパク質や脂質が糖と結びついて化学反応を起こし、劣化した結果生じる物質。いわゆる「糖化」の最終産物であり、体内や食品中に存在。


このAGEは老化やさまざまな疾患と関係が深いとされているやっかいな物質。例えばホットケーキを焼くとき、ホットケーキの表面が褐色に変わるのと同じように、体内でもタンパク質や細胞が焦げていく。これが「体が焦げる」と表現されるゆえん。そして「糖化」とは、体内で過剰に摂取された糖(グルコースやフルクトース)と、タンパク質や脂肪が結びついて「AGE(終末糖化産物)」という物質を生成する現象のこと。


このAGEが体内に蓄積されることが、老化の進行を「大きく加速させる」原因に。簡単に言えば、AGEが体内の細胞や組織にダメージを与え、老化現象を引き起こすのです。




糖化が引き起こす症状とは?

糖化が進行すると、目に見える老化症状に加えて、深刻な病気を引き起こす原因に。まず、肌への影響から解説。

肌のたるみ・シワを加速させる

糖化が進行すると、肌を支えるコラーゲンがAGEによって攻撃され、ダメージを受けます。コラーゲンは肌の弾力やハリを保つ重要な役割を果たしていますが、糖化によりその機能が低下します。これにより、知らないうちに肌の弾力が失われ、たるみやシワが目立つようになってしまうという、気づいたときには手遅れ…という状態に。



シミやくすみ

AGEが蓄積されると、メラニンの生成が促進され、シミやくすみができやすくなります。特に、顔のシミが気になる人は紫外線も含め、糖化が主な原因となっている可能性大。



内臓や血管へのダメージ

糖化の影響は肌だけにとどまらず。糖化は、ガン、アルツハイマー病、糖尿病、高血圧症、骨粗鬆症、心筋梗塞、脳卒中など、さまざまな恐ろしい病気の原因にも。AGEが血管や内臓の細胞を傷つけ、病気のリスクを高めてしまいます。




糖化が進行する4つの原因は?

AGEを多く含む食品を摂取する

AGEは体内で自然に発生しますが、食事から摂取することでも糖化が進行します。特に、糖分や脂肪、タンパク質を高温で調理すると、AGEが大量発生。例えば、揚げ物や焼き物、フライドポテトなどはAGEがとても多く含まれているため、注意が必要。美味しいものこそ我慢が必要…ということですね。



原因は「調理方法」にあり

AGEは「高温で調理すると発生しやすい」。先述したとおり焼く、揚げるといった調理方法はAGEを増加させる原因。逆に、煮る、蒸すといった低温調理ならAGEの発生を抑制することが可能。



脂質や炭水化物を多く含む食品

脂質や炭水化物を多く含む食品を摂取すると、血糖値が上昇し、糖化を促進。特に、とくにお米やパン、甘いお菓子などは血糖値を急激に上昇させるため、AGEの生成を加速させてしまうという結果に。



紫外線やタバコ

紫外線やタバコもAGEの発生を促進してしまう要因。紫外線は肌にダメージを与え、AGEの蓄積を助長するため、日焼け止めや帽子、サングラスを使って紫外線を避けることが重要。日中だけでなく、室内でも自然光が入る日当たりのいい場所は日焼け止めが必須。また、タバコはAGEの生成だけでなく、肌や髪にとっても非常に有害というのはご存じどおり。




AGEの蓄積を防ぐ「血糖値の管理」方法は?

一番大切なのは毎日の食事で糖質の摂取量をコントロールし、急激な血糖値上昇を防ぐこと。ポイントは「低GI食品」「高温調理を控える」「加工食品を避ける」「抗酸化成分の摂取」。



血糖値のコントロール「低GI食品を選ぶ」

GI(グリセミック指数)は、血糖値を上昇させる速さを示す指標です。低GI食品は血糖値の急激な上昇を抑え、AGEの生成を抑制します。玄米、全粒粉のパン、豆類、野菜、フルーツ(特にベリー系)を積極的に摂る習慣を。また「野菜から食べる」のもGI値の急激な上昇を防ぐのにとても効果的。

食物繊維を豊富に摂取

食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにし、AGE生成を抑制。野菜、果物、全粒穀物、豆類、ナッツ、種子などタンパク質と健康的な脂肪を摂ることを意識して。良質なタンパク質(鶏肉、魚、大豆製品など)や健康的な脂肪(オリーブオイル、アボカド、ナッツ)を摂ると、AGEの生成を助けない望ましい体内環境に。



低温調理を心がける

揚げ物や焼き物、グリルはAGEを増やす原因になるので「水分を多く使った料理」、たとえば蒸し料理、煮込み料理、スチーム調理に変更を。蒸し野菜、スープ、煮魚、またレモンや酢など、酸性の食材を加えることも、AGEの生成を抑制に有効。ドレッシングやマリネに使ったりと、調理時に加えるのがポイント。唐揚げなどにレモンをかけて食べるるというひと手間を加えるだけで、AGEの吸収を大きく抑制。



抗酸化成分を多く摂る

AGEは体内で酸化ストレスを引き起こすため、抗酸化作用のある食品を意識的に摂ることで、AGEの影響を軽減。具体的には「ビタミンC・E・ポリフェノール。


ビタミンCはAGEの生成を抑制するだけでなく、肌のハリや弾力を保つためにも重要な栄養素。柑橘類、キウイ、赤ピーマン、ブロッコリーがおすすめ。ブロッコリーの新芽にはAGEの吸収を抑えるスルフォラファンという成分が豊富。ビタミンEは抗酸化作用が強く、AGEのダメージを軽減する働きも。


アーモンドなどのナッツ系、ひまわりの種、ほうれん草、ポリフェノール、赤ワイン、緑茶、ブルーベリーなどもAGEの生成を抑制するビタミンや抗酸化作用も抜群。また、キノコは「キチン」という成分を豊富に含んだ、AGEの吸収を抑える優れた食材。お肉を食べるときなど、一緒に摂ると効果的。



フィトケミカル(植物化学物質)を意識的に

野菜や果物に含まれるフィトケミカル(植物由来の化学物質)は、抗炎症や抗酸化作用があり、AGEの生成を抑える働きがあります。食材としてはトマト(リコピン)、にんじん(カロテノイド)、ニンニク(アリシン)など。




変えたい「食事のタイミングと生活習慣」は?

食事の回数を分けるなど「1回の食事で過剰な糖質やカロリーを摂取しない」ように工夫を。小分けに食べることで、血糖値の急上昇を防げます。

また、食後の散歩を習慣にするなど食後に軽い運動をすることで、血糖値の上昇を抑えることができ、AGEの生成を防止。運動はインスリン感受性を高め、血糖値のコントロールに有効なので、週に3回以上、30分程度の有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)を推奨。




糖化を抑制するための「3つのポイント」まとめ

糖化の進行を抑制するためには、食事や生活習慣を見直すことが大切。最後におさらいして、明日から早速将来に向けての食生活の見直しを。



AGEを多く含む食品を避ける

まず、AGEが多く含まれている食品を避けることが基本。フライドポテトや唐揚げ、ポテトチップスなどはAGEが大量に含まれているため、控えるのがベスト。



AGEを抑制する食品を摂取する

AGEの生成を抑える食品を積極的に摂取することが重要。



適度な運動をする

運動もAGEの対策には有効。特に筋トレやウォーキングが効果的です。筋トレを行うことでインスリンの働きが良くなり、血糖値を下げることができます。また、食後に軽いウォーキングを行うことで、血糖値の上昇もゆるやかに。

糖化は体内で進行する老化の原因であり、肌や内臓、血管に深刻な影響を与えるもの。しかし、食事や生活習慣を見直すことで、その進行を抑制することが可能。AGEを多く含む食品や調理方法を避け、AGEを抑制する食品を積極的に摂取することで、若々しい体と肌に。大切なのは日々の積み重ね。少しずつ生活習慣を改善し、健康的な体作りを目指して。




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