シーズンのはじまりとともに、スタイリストの心を動かした旬のトピックスを深掘り調査。A/Wコレクションの最新事情からリアルクローズにいたるまで、日々多くの服にふれるプロならではの視点が参考に。
スタイリストに聞いた「最新カラートピック」
膨大なコレクションルックをひもとく中で集まった、「色にまつわる」アイディアの数々。スタイリストたちが注目するのは「普通の色」。全部同じ色、小さく使う色…など色に頼らず着方でベーシックをアップデートするアイディアをご紹介。
1.GRAY
「まじめなグレーをハズず着方・シルエット」
白黒と並ぶ定番色。その知的でコンサバなイメージを「着くずす」という選択が、グレーの可能性を広げる新たな一手。
Stella McCartney

「ざっくりとしたローゲージのニットカーデに、深く開いたVネックが気だるさを誘う。今季多く見られたフードつきのリラクシーなデザインも、チャコールグレーで引き締めれば、だらしなくならず『適度な脱力感』に落ち着く。この大人の余裕を感じさせるバランスが重要」(渡邉さん)
Acne Studios

「どこか懐かしさの残るダッドな柄ニットが、アグネらしい極端なBIGサイズで登場。ともすれば野暮ったくなりがちなアイテムを、この思いきりのいいメリハリで一気にモードへ転換させているのがポイント。この大胆なシルエットこそが、今季のグレーを更新する鍵」(船戸さん)
VALENTINO

「メンズっぽいクラシカルなテーラードジャケットは今季の注目株。そこにヴァレンティノを象徴する鮮烈な赤を効かせるのが新しい。単体では主張が強すぎるブライトカラーも、懐の深いグレーで”おおって”使う。これだけで赤が装いの一部としてなじみ、洗練された印象に」(高木さん)
2.ALL BROWN
黒にかわる「隙のない全部ブラウン」
ALL黒をブラウンに塗りかえて鮮度をアップ。徹底して「肌を見せない」着方も目立った。
Max Mara

「存在感のある幅太リブニットに、タフなレザー。この『真逆の質感』をぶつけることで、ルーズなシルエットどうしでも、ぼやけず立体的なメリハリが生まれる。素材のコントラストで魅せるのが、ワントーンを成功させる絶対条件」(出口さん)
Stella McCartney

「コクのあるディープブラウンでまとめたルック。注目すべきは、あえて”まったく同じトーン”でそろえたベルト。異素材の光沢でミニマルな変化をつけつつ、トーンを統一することでより隙のない、洗練されたALLブラウンが完成」(樋口さん)
3.SMALL WHITE
強い色を和らげる「さし色としての白」
白をメインにしない。ダークカラーや主張の強い色に対し、あくまで「抜け役」として白を少量効かせる。PRADAが「未完成の美学」をテーマに掲げた今季、この「小さな白」でルック全体を引き算する提案に注目。
PRADA

「ネイビー×ボルドーという重厚な配色。それが、えりを縁取る白に近いオフイエローの極細ラインひとつで軽やかな印象に変わる、このさじ加減が絶妙。これ見よがしに足さないのが今の気分」(樋口さん)

「赤ニットから無造作にのぞかせた白シャツ。この計算された”雑さ”こそが、着映える赤のハードルを下げ、リアルクローズに引き寄せ。決めすぎないための白、という新しい解釈はすぐにでも取り入れたいテクニック」(渡邉さん)
4.ALL BLACK
黒のワントーンに求めたい「肌感」
重くなりがちなALL黒。今季のランウェイで目立ったのは、その緊張感をほぐす「部分的な肌見せ」。素材の重さと素肌の軽さ、そのコントラストが新たな黒の表情を引き出す。
Max Mara

「重厚なAラインのベロアドレスに、潔く開いたデコルテ。ニットやベロアといった秋冬ならではの『厚みのある素材』と、のぞく素肌のアンバランスさ。その生々しいコントラストが、息をのむほどセンシュアル」(渡邉さん)
TOM FORD

「トム フォードは、つややかなサテンと短丈をかけ合わせたALL黒で、力強いフェミニティを表現。これも、あえて秋冬らしい重さのある素材で肌見せするバランスが新鮮。黒の強さを、よりセンシュアルに昇華」(塚田さん)
5.NUDIE KNIT
肌色の延長で「ヌーディに」ニットONニット
多くのメゾンで目を引いたのがニットアップ。肌の延長線上にあるような、次なるセンシュアルの形。
Louis Vuitton

「全身ニットでも膨張して見えないのは、計算されたシルエットとリブの縦落ち感があるから。あえてボリュームのあるファー小物を頭と足先に持ってくることで、全体のバランスを締めている点も巧み。Iラインを意識させつつ、先端で遊ぶ好例」(塚田さん)
Max Mara

「女っぽい表情を引き出す、しっとりとしたグレージュのリブニット。タートルネックからロングスカートまで、肌の露出が”まったくない”にも関わらず、体のラインを拾うことで、ここまでフェミニンに転じる。これこそが今季のムードを象徴したルック」(高木さん)
6.KHAKI
無骨なカーキを「正統派に装う」
ミリタリーやワークといった、武骨なイメージが先行するカーキ。そんなカーキをキレイめなアイテムと合わせ、古き良き正統派スタイルに仕上げたスタイリングが各メゾンでも目立った。
MIU MIU

「トラッドなローファーに、カーキのハイソックス。ブラウンのトーンに奥行きを生むだけでなく、ソックスをつなげてロングブーツのように見せる簡単ですぐにとり入れられるテクニック」(出口さん)
BALENCIAGA

「ミリタリーウエアに気品を宿すバレンシアガのルック。ただ羽織るのではなく、えりを立てて着る。それだけで、無骨なカーキがいっそうハンサムで洗練されたムードに。まさに”着方”で差がつく好例」(渡邉さん)
とり入れやすい「可愛い着方」のテクニック
お次はスタイリストが気になった着方のテクニックや、アイテムの選び方にフォーカス。「マネできそう」を前提条件にしたヒントを用いて、いつものスタイルをレベルアップ。
Max Mara
「しなやかなコートをメリハリづける幅太ベルト」

ロング&リーンなグレージュコートの上をぎゅっと引き締める、幅太のレザーベルト。あいまいなトーンがぼやけて見えるのを回避できます(岩田さん)
MM6 Maison Margiela
「気だるげなニットにムードを生む白シャツ」

ずるっとしたニットカーデのVラインを強調するように仕込んだ白シャツ。ネックラインに抑揚がつき、ルーズなのにだらしなく見えない(船戸さん)
AURALEE
「ルーズ×ルーズに首元をつめるひと手間」

だぼっとしたニットとワイドパンツ。インナーにハリのあるシャツを仕込んでネックはタイトに閉じる着方が、ルーズどうしでも洒落て見える理由(渡邉さん)
MSGM
「まじめなセットを着崩すウエストレイヤード」

端正なグレーのセットアップに、腰からトランクスをのぞかせて今っぽく。中央のブランドロゴも、ハンサムなセットアップを退屈させない飾り気に(岩田さん)
Stella McCartney
「むしろモードなあり余るボリューム感」

強気なレザースカートに負けない迫力の大ぶりな編み地のニット。首をすっぽりおおう、風格あるフォルムで、あたたかなニットがモードに転換(樋口さん)
AURALEE
「トラッドなカーデに抜けを生むボタンの開閉」

コンパクトなニットカーデの、いちばん上と下だけボタンを開けて抜け感づくり。マイルドなイエロー×ベージュにシャープなキレが生まれます(出口さん)
PRADA
「ハンパな丈こそ肌をのぞかせる」

今季旬のふくらはぎ丈のスカートをスタイルアップさせるために、手首や足首を中心にざっくりと肌見せ。必然的にやぼったく見えないバランスに(岩田さん)