新たに始動するアパレルラインと新店舗にフォーカス
『OUTDOOR PRODUCTS』と聞いて、思い浮かべるのはカジュアルなデイバッグ。そのイメージをもっと汎用性高く、デイリーに取り込めるものにしたアパレルラインが今季始動しました。クリエイティブディレクターをつとめる染谷真太郎氏のインタビューをもとに、新たに展開される洋服たちの魅力、そして中目黒にオープンした新店への思いなどをひもときます。
【interviewee/染谷真太郎】
2001年から2021年までShinzoneのディレクターを務める。2021年秋に株式会社CINCH(シンチ)を設⽴。デニムブランドOblada(オブラダ)を2022年春夏シーズンより展開。ブランド戦略やクリエイティブディレクターとして幅広く活動中。
「リュックと言えば」万人が思い描くスタンダードがここにある
-これまでの『OUTDOOR PRODUCTS』にどのようなイメージを持っていましたか?
(染谷真太郎さん:以下、省略)「リュックの絵を描いてみて」と言ったら、万人がアウトドアプロダクツのリュックを描くー。それくらいスタンダードなブランドですよね。それこそ私にとっては、デニムと言ったらLevi’s、トートバッグと言ったらLL Beanなどと一緒。ただ、それら本物を作っているブランドと同様の評価を果たして受けているのだろうか?という疑問も同時に持っていました。
ー「正しい評価」を得る、というのは意外と難しそうですね。
そうなんです。おそらく、そのままオーセンティックなブランドストーリーを訴えかけても多くの女性には伝わりづらい。だからこそ、目に留まりやすいビジュアルや洋服のプロダクツを交えて、このバッグたちも伝えていきたいというのが自分がこのお仕事を引き付けた根底にありました。
伝統あるブランドへのリスペクトとアパレルラインに込めた思い
-アウトドアプロダクツの魅力はずばり何ですか?
アウトドアプロダクツは1973年に創業して昨年50周年を迎えた歴史あるブランドです。創業当時から掲げているのが「Simple、Lightweight、Tough、but Reasonable」。軽くて、丈夫で、壊れづらい。そのうえにお求めやすいということですね。「リーズナブル」というのは、決して安さを求めているわけではなく、「価格以上の価値がある」ことを指していると思っています。自分としてもこの4つのキーワードが大きな魅力であるし大事にしていきたいポイントです。もちろん、すでに幅広い層に知られているというのもこのブランドの強味ですよね。
ーアパレルラインの「Usual Things」にはどんな意味を込めたのですか?
『Usual Things(ユージュアルシングス)』の「ユージュアル」には、「いつもの」とか「日常の」という意味がありますよね。特別な日ではなく、普段着れる、毎日使いたくなる、そんな「日常に寄り添うような服」を作りたいという思いを込めたブランド名にしました。
-なるほど。確かにラインナップを見ると、それがわかりますね。
ありがとうございます。特に、象徴的なバッグがこのキューブバッグです。SC(ショッピングセンター)への展開を念頭に、というのがオーダーがありましたので、それを踏まえてプロダクツも考えていました。
実は義理の姉が鹿児島に住んでいまして、普段は自分がやっている『CINCH(シンチ)』の通販なども活用してくれているのですが、やっぱり自宅の近くで実物を見て買い物をしたいというニーズもあります。このように地方に住む姉のこととSCへの展開をリンクさせながらいろいろと検討しながら作ったバッグです。
例えば、義理の姉が自転車に乗ってスーパーに行くときに、ハイブランドのバッグを持つよりも、これくらいのバッグのほうが気兼ねなく使えますよね。一方で、東京に遊びに来るときにも似合う。そんな汎用性の高いバッグを作りたかったんです。
ーお洋服のほうはどうですか?
デイリーユースには「洗える」ことがすごく重要だと思うんですね。なのでカットソーのシェアを大きくしています。洗えるカットソーはブランドの顔になると思っております。
他にはVANSのスニーカーなんかも買い付けています。オリジナル以外にもそういったセレクトものもこの中目黒の新店舗中心に置いていきたいなと思っているところです。
意外と郊外に少ない「メンズライクなカジュアル」ブランド
ーどういう女性に広めていきたいですか?
都心に住んでいると麻痺してしまうのですが、郊外に出るとショッピングセンターが唯一の買い物できる場所なんですよね。そこは意外と「メンズライクな」カジュアルが充実していないんです。
ー確かに地方のSCに“ちょうどいい”カジュアルのお店って少ないですよね。
そうなんです。急にコンサバになってしまったり、逆にアウトドア感が強すぎたり。だからこそたとえ地方に住む方であっても、20代後半から40代の女性が手に取りやすく、都会的でちょうどいいカジュアルを提供していきたいと思っています。
価格に込める「価格以上の」価値
ー今まで手掛けてきたブランドとの違いはありますか?
例えば『Oblada(オブラダ)』の服はとても専門性が高いんですね。価格も高いですし、縫製にもとてもこだわっています。音楽でいうと、ジャズやロックのような、“ハードコア”。でもそういったものを20年以上やってきたからこそ、逆に“ポップス”が作れるかもしれないと。今回のアウトドアプロダクツはまさにそのポップスなんですね。幅広く、手に取りやすく、万人に好まれる。そこが自分の中では大きく違います。
-“リーズナブル”を実現するための苦労もありそうですね。
自分の手掛けてきたものは今までほとんどメイドインジャパンで、価格もそれなりのものが多かったのですが、今回は日本製だけでやろうとすると目標の価格を実現できなかったので、中国製などでも対応しました。でもかえって、中国製でもこんな細かいことやきれいな仕上がりも実現できるんだという発見も。そう、どこで作ろうが、「ビジョン」をきちっと伝えれば実現できるということに気づきました。なので今回学んだことを、日本の工場さんにもフィードバックしていければと思っています。
なぜ「中目黒」という土地なのか?
-“万人”を狙うなら渋谷や表参道のほうが土地柄フィットする気がしますが…?
中目黒に『OUTDOOR PRODUCTS』をオープンした理由としては、上述したことと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、「感度の高い人に着てもらいたい」と思ったからです。例えば、めちゃくちゃ美食家の人がいたとしますよね。その人は、銀座でお寿司を食べる日もあるかもしれないけど、近所のビストロでご飯を食べる日もあると思うんです。そのビストロ的立ち位置を我々は目指していて、「おしゃれな人が日常使いする服」を確立していきたいんですね。やっぱり中目黒は感度の高い、おしゃれな人が行き来する場所だと思うので。そういった人たちが行きかう中で、“ご近所のごひいきの店”にしていきたいです。
また、地方に住んでいる人が東京に出てきたら、どこを“うろうろ”したいのかな?とも考えてみました。さまざま路面店のデータなどもいただき、比較検討したのですが、渋谷や表参道とかは言うまでもなくメイン。だけど、ちょっと外れた中目黒にこそおいしいコーヒーやさんとかパン屋さんとかあるじゃないですか。中目黒に来る人が期待しているのは、こんな生活の中の楽しいエンタテイメントなのではないか?と。そういう意味で「日常によりそうアパレル」を提供したいという思いと、合致する土地柄だと思いました。
中目黒店のデザインのキーワードは「あたたかみ」
-すごく色使いが可愛い内観ですよね!
参考にしたのは、メキシコの建築家ルイス・バラガン(Luis Ramiro Barragan Morfin)という方の建築物です。アウトドアプロダクツのイメージを1つ言うとするなら青だとか赤だとかの「はっきりした色」だと思っていて。そんな色を象徴的に使う人いないかな、と考えていたときに、彼の建築物が思い浮かびました。こういう黄色とかピンクとかの壁の使い方もすごく素敵なんです。外装はしっくい調の塗料を使用したのですが、これもよく使われている技法ですね。さらに店舗の天井も彼の作っているものを参考にしました。
-色以外のこだわりはありますか?
アウトドアプロダクツってすでにメジャーなブランドですが、今回に関しては「あたたかみ」を大事にしたくて、あえて「小さな規模=こじんまり感」を意識しました。ショップの内観もそう。例えばキャッシャーとオフィス(風のバックヤード)をつなげています。工房感というか、小さな場所から世界へ発信している感じを出したくて、こういう設計にしました。
ー今日(ローンチパーティ)飾っているお花も可愛いです!
チューリップは自分が今朝自宅から急遽持ってきたものなんです。あとクッキーモンスターのぬいぐるみも(笑)。いい意味でプロフェッショナル過ぎない、手作りな感じも「あたたかみ」につながるかなと思っています。
ー染谷さん自身もショップに出ることがあるとか?
はい!最初が肝心だなと思っているので、ぜひお店の中で生のお客様の声も感じたいなと思っています。ぜひ、皆さんに愛される「日常に寄り添えるプロダクツ」を発信していけたらと思いますので、末永く愛していただけたらうれしいです。
【INFORMATION】
●OUTDOOR PRODUCTS中目黒店
住所 東京都⽬⿊区⻘葉台1-16-4 ME BLDG1F
電話番号 03-5539-8525
営業時間 11:00-20:00
@outdoorproducts_jp はコチラ↓