季節やトレンドが移ろおうとも、いつもそばにある確固たる存在感と意思を感じる寡黙な黒。地味だからいい。変わらないからいい。黒に秘められたポテンシャルを深く見つめなおすことで、「万能」という言葉だけでは片づけられない魅力を再認識。
飾らずとも映える「究極ミニマルな黒」
装飾も形によるメリハリもなくし、平坦にするほど引き立ってくるのが、黒という色が持つ本来の強さ。なにと組み合わせてもどんな着方をしても凜とした表情を保てる堂々たる佇まいは、ごくシンプルな装いにも自信を与えてくれる。
すそにかけてのわずかな広がりで黒をいっそう美しく

着飾るのが目的ではなく、腰位置を高くし、ボディラインをキレイに見せるためのフレア。半そでよりやや長く、5分までいかない絶妙なそで丈も計算済みのバランス感。実は地厚なコーデュロイ素材だから、フォーマルな形を日常づかいしやすく。
スカートなのに辛口に仕上がるスラックスのようなスマートさ

ほのかにつやめく上質なポリエステルを採用した、体の凹凸さえもカバーするタック入りのIラインスカート。フォーマルなパンツのような洗練された佇まいながら、スカートならではのやわらかさを兼ね備えた「カッコいいけどシャープすぎない」、都合のいい1着。
硬派なテーパードに張り合いを持たせるソリッドなレザー素材

落ち感のあるやわらかなシャツに相反するレザーの強さで、黒でまとめた正統派な装いに抑揚づけ。
「まとわりつかない」 Iライン

重ね着してももたつかない絶妙な身ごろのカットソー。ひかえめなタートルは窮屈感なく、くしゅっとたるませても決まる。腰まわりはコンパクトながら脚線を拾わない絶妙なゆるさ黒デニムは、双子のセシリーとともにジュエリーブランドを立ち上げ、モデルとしても活躍するアマリーとアッパーハイツとのコラボアイテム。
「タフタ素材」のトレンチコート

定番アウターとして不動の人気を誇る行儀のいいトレンチコートを、もっと気楽に着るための新発想。動きと奥行きを出せるささやかな光沢を味方につけて、品は保ちつつエフォートレスに昇華。ナイロンほどスポーティ感が出ず、カジュアルには見えない都合のよさが魅力。
履くだけで「シャープなのにエレガント」

動くたびに軽やかにゆれるサテンスカート。角度によって光の入り具合が異なり、自然な縦のラインが完成する。タイトスカートほど直線的じゃないけれど、ダイナミックに広がることもない、都合のいい微フレアシルエット。締めつけのないウエストゴム仕様で、着用時のストレスもなし。
つかず離れすぎずの「絶妙シルエット」

脚にぴたっとはりつかず、適度にゆとりがある。ストレッチ性の高い生地で、スキニーデニムよりきゅうくつ感なくスマートな仕上がりに。縦幅の広いウエストバンドで、おなかまわりを引き締める効果が。肉感を拾いにくい厚みと弾力もポイント。
スタイリストに聞いた「黒レザーのとり入れ方」
「気張ったオシャレは苦手」な自身の私服にも通ずる「着心地も見た目も疲れない」シンプルなスタイリングで人気のスタイリスト・樋口かほりさん。そんな彼女が注目する服、そしてシンプルでもオシャレに見えるスタイリングのテクニックを総取材。

(スタイリスト・樋口かほりさん)
GISELeスタイリスト。大人に似合うカジュアルをモットーに、リアリティのあるアイテム選びの提案と肩の力を抜いて着られる、シンプルカジュアルなスタイリングは毎号多くの反響が。 「久しぶりにレザーが気分。着方の迷いをなくすコンサバな形・黒の一択。着心地は柔らかい質感を選ぶのがマストです」(樋口さん)
トップスやアウターの厚みを削ぐ「レザースカート」

「レザーは強さのある素材だから、女性らしいシルエットを選ぶのが基本。コンパクトな形は引き締め役としても使いやすく、レザーのツヤ感は、ほっこりしがちなニットを着る際のバランサーとしても重宝」(樋口さん)

ハート柄の白ニットにはレザーのスカートで甘さを微調整。マットな素材のIラインスカートで、ケーブルニットのほっこり感をカット。ウエストはコンパクト、ヒップまわりは少し余白のある形なら、脚にぴたっとはりつきにくい。
「上下でつなげる」

セットアップをレザーに更新してミニマルなスタイルに存在感を。「マットな質感で体をおおい、コンパクトなシルエットをいっそうスマートな印象へ。薄くてやわらかいテクスチャーだから、上下で着てもノンストレス」(樋口さん)
ふんわりニットに好相性な「レザーのキャミ」

「モヘアやシャギーニットなど、ふんわりとした質感とデコルテの肌感。ニットをより女らしく見せてくれるこの組み合わせに、辛口な黒レザーを採用。配色も黒+グレーでまとめることで、甘すぎず辛口なムードで装える」(樋口さん)

レザーストラップをちら見せしてシャギーニットに微量のスパイスを。トップス感覚で使える、ミニ丈のレザーワンピース。キャミタイプは、インナーとして締めと抜けを両立できる。
「レギンスのかわりに」

細身のレザーパンツを合わせてボリュームブラウスを甘口モードに。「ストレッチ性をおさえたことで、脚のラインをすらりと流せる。広がりのいいブラウスにより、レザーパンツの華奢さが引き立つため、ローヒールのままスタイルアップが可能に」(樋口さん)
主役にしない「レザーのミニ」

「丈をごまかすイメージで」暗色のタイツを下に仕込む。「ミニというだけで挑戦的なアイテムですが、レザーになるとむしろ“大人のミニ”に変わる印象。ビッグスエットなど直球でカジュアルなトップスには、デニムより緊張感が加えられてむしろ好都合な場合も多い。すそからのぞかせる程度で“主役にならないバランス”が甘く転ばせないコツです」(樋口さん)
Iラインスカートの延長ではける、直線的なライン。ほどよく伸縮性があるため、コンパクトなのに窮屈感なし。ライトカラーのスエットを合わせて、気だるさと清潔感を同時に保って。
「最も使える」黒ライダースの選び方
トップス的にも着られて、レイヤードの一手も担うライダースジャケットは冬服の甘さの引き締め役としても重宝。そんな黒ライダースの上手な使い方を着回しやコーディネートの実例で解説。
ムダを省いたデザイン・シルエット

□中にも外にも重ねられる、余白のある薄手のミドル丈
□ウエストまわりがそぎ落とされたダブルデザイン
□ひかえめなツヤで動きやすいなめらかな質感
着回す黒ライダースジャケット 22,000円/Levi’s®(リーバイ・ストラウス ジャパン) クラシックなディテールはそのままに、質感やフォルムを現代に寄せた定番アイテム。3サイズ展開で、自分にフィットするサイズを見つけられる。
1
同じライダースで「男と女」
ゆるぎないライダースのデザインを盾に、「男と女」で着分けを敢行。何にも染まらない黒という範囲内で、その二面性を比較検証。
ドレスに羽織ってタフな女らしさを演出

キレイめな服と小物に1点、ライダースを羽織るだけ。オール黒にもメリハリがつき、スタイルUPも同時にかなう。
ツヤをともなう黒一貫でスエットの奔放さを回避

ライダースの微光沢により、やんちゃなスエットも相応の大人っぽさへとアップデート。ソックスとスニーカーで足元に微量の白を仕込み、黒の緊張感をくずさずほどよい抜け感に。
2
ちょっと寒い日の「ニットとのレイヤード」
本格的に暖かくなるまで、コートは使わずニットをフル活用。
レザーでおおって白ケーブルをシャープに転換

ニットを仕込む余白がありながら、ボリュームを拾わない絶妙さ。レザーとケーブルの緩急ついたコントラストも◎。
デニムジャケット+ニットのゆるさを微調整

レザーを重ねるひと手間で白パンツの膨張を回避。白地に黒ハート柄のソックスで甘さを足しても、レザーの強さがあればシックな可愛げに着地。
全部レザーをやさしく見せる「首だけもこもこ」

ライダースとレザースカートを合わせて、レザーをセットアップ風にセルフメイク。強気な上下だからこそ、ふわふわとしたニットで緊張感をセーブする逆転の発想。ベージュ手前のシャギーな白で、無機質なモノトーンにあたたかみを添えて。顔まわりをおおうボリュームが小顔効果&肩まわりを華奢に見せてくれる。
3
アウターどうしのスマートなレイヤード
続いて活用したい「アウターどうし」のレイヤード。ライダースを「中に」「外に」使うテクニック。
ラフなジャージーに一石を投じるレザーの艶

デニムなどカジュアルでまとめると、どこかあか抜けないスポーティな今季のトレンド。辛口なレザーの切れ味があれば、研ぎ澄まされた印象に。スラックスとのメンズな装いがかえって女らしさを引き立てる。
前を閉じてトップス的にまといデニムをよりストイックに

白タートルとデニムの冬の定番を、2つの羽織りでブラッシュアップ。日常に似合う華やかさがそなわる。
【上質なのに1万円以下】
≫コートを着るその前に「手軽で身軽な名品ジャケット」
