多忙を極める中で、いつ会っても「バッグを怠らない」スタイリスト・樋口かほりさんのプライベートルックを調査。仕事柄、動きやすさを重視するうえでつい多くなるというTシャツ・デニムを例に、樋口さんのバッグ選びの思考回路を解説します。 ※紹介しているものはすべて樋口さんの私物です。
【スタイリスト・樋口かほりさん】
表紙をはじめ、GISELeの核を担うスタイリスト・樋口かほりさん。Tシャツやデニムなどベーシックな服を生かした、流行にとらわれない自身の視点で生み出されるスタイリングには、毎号多くの反響が。
【樋口さんが愛用している6点のバッグを使い回し】
選ぶ条件はいろいろあるけれど、「かわいい」「使いやすそう」という単純なインスピレーションこそ、長く愛せる理由になる。
01「ほぼ黒の感覚で使うネイビーが好き」
10年以上前に購入。ネイビーは黒のような使いやすさがありながら、黒よりずっと幅がある色だと思っています。ベージュやグレーなど、はっきりしない装いに深みを足すためプラスすることが多いです。
02「白が使えることを知って黒も追加」
05とほぼ同じタイプのコムデギャルソンの定番ボストンバッグ。先に白を購入し、使いやすさ・合わせやすさを理由に黒を追加。きちんとしているけれどカジュアルでもある「ローファー」みたいな存在。
03「季節に応じた素材感を1つ」
春夏ならかご素材、冬ならニットやコーデュロイなど、サブにも主役にもなりうる「大きめ」のバッグを見直しています。質感も今年はソフトな風合いが気分。かごバッグといっても、ハードなラタンのような素材は冬のコートに合わせたりもします。
04「ロゴTを選ぶ感覚に似てる」
トートバッグは古着屋さんで、服のついでに買うことが多い。たくさん陳列された中からざっと見て、なんとなく好きなプリントを手にする、ロゴTの選び方に近いです。ほかのバッグと2個持ちが前提。
05「潔い白」
とにかく合わせやすくて使いやすい。ここまで突き抜けた白はどの色とも交わらないので、服も選ばない。クセのなさがかえって存在感を放っているのか、「それどこの?」と聞かれることが多いです。
06「エルメスの中でも女性らしい」
スニーカーやビーチサンダルなど。わかりやすくカジュアルな足元でハズすことが前提じゃないと、気後れすることもある格調高きケリー。だから冬よりラフになる夏のほうが、活躍頻度が高まります。
001.
「ノースリだからバッグ2つ」
半そでよりも肌の露出によって軽く見えるため、小物づかいの少しの違いが、印象を大きく左右する。理想の重みを「バッグ2つ」に求めたの真意とは?
「チェーンバッグの重みに使い古したトートバッグのハズしを加えれば個性もあり、立体感も見込めるなと。トートバッグは服のついでについ買っちゃいます。プリントTにあまりなじみのない人でも、「無地T+ロゴバッグ」なら試しやすいと思います。ミニショルダーはキレイめに、ロゴトートはカジュアル、そしてバッグの大きさに大小をつけるのもポイントのひとつ」(樋口さん)
002.
「疲れさせない配慮」
「デキる女は荷物が少ない」よく聞くこの言葉を裏づけるような「他人目線」のバッグ選び。街の人の装いからヒントを得る、樋口さんならでは気づきが凝縮。
「街の人のスタイリングから気づかされることがよくあるのですが、荷物が多いとちょっと疲れて見える気がしませんか? 私も職業柄どうしても荷物が多くなってしまうのですが、小さなバッグ1つで身軽に街を歩く女性に憧れます。
シンプルなTシャツ・デニムにミニバッグはそんな理想を込めて。チェーンに華やかさがあるので、足元はスニーカーで力を抜いて。斜めがけにすることで、より軽やかな雰囲気を出せます」(樋口さん)
003.
「ゆるいTシャツのストッパーに」
デニムに合わせるならTシャツは絶対タックINしていたところ、髪を切ったことで、アウトで着るよさに目覚めたという樋口さん。と同時に小物の重要性も再確認。
「ロングヘアでBIG Tをアウトして着ると、やぼったくも見えかねない。髪を短くしたらバランスがとりやすくなって、Tシャツのゆるさがかえって新鮮で。ただ、そのぶん小物で脇を固めないとただ地味になってしまう。
ということでかっちりしたミニバッグ・まじめな眼鏡・赤いミュールと強気な3点をセットしました。デニムもよりカジュアルに見えるダメージタイプなので、ラフに見せないための小物の「かっちりとした形・リッチな質感」が必須です」(樋口さん)
004.
「大人だからきる遊びで」
デニムの中でもボーイッシュなオーバーオールにケリーを添え、ある意味カジュアルを裏切る贅沢な遊び。カジュアルすぎずリッチすぎない秘密を追跡。
「ある意味わかりやすいバッグなので、いかにカジュアルに落とし込むかが自分の中でのルール。言いかえれば、どう着くずしても結果上品に引き戻してくれる、絶対的な安定感がこのバッグにはある。
Tシャツはオーバーオールを幼く見せないシアーな質感を選び、女性らしいバッグとバランスをとりました。華奢に見えるコンパクトなサイズも重要です」(樋口さん)
005.
「淡い色には大きなバッグを」
Tシャツ・デニムをただぼんやりした印象にさせないために、大きなバッグで視線を集中させる作戦を。
「薄いグレーにくすんだ白など「浅い色のヴィンテージ感」って、どこかそそられるものがありますよね。シンプルなのに上級に見えて。ただ、どこかにポイントがないと膨張して見えるので、かごバッグのがさっとした質感と極端に大きなサイズの異質なインパクトを利用しました。
BIGサイズといってもレザーだと重いし、コットントートだとカジュアルすぎる。かごバッグなど軽い最良の選択だと思います。バッグの軽快なイメージに合わせて、そでを小さくロールアップさせたところもポイントです」(樋口さん)
006.
「黒や白・ブルーに加えてデニムはブラウンにも注目」
簡単にお洒落に見える方法の1つとして定着した「色をまとめる」スタイリング。わざとらしくない組み合わせを重視する樋口さんのこだわり。
「トーンをそろえる方法は確実にお洒落に見えるからこそ、少し背伸びした印象にも見えかねないことが気になっていて。洗いざらしのTシャツとデニムなら自然体でいいなと。
さらに足元はラフに振り切って、風格のあるバッグをぶつける、という極端なバランスならワントーンでも気どることなく、シンプルな中でユーモアも出せると思います。レザー本来の色みに加え、ケリーのゴールドのパーツも、グラデーションを担う「1色」として機能します」(樋口さん)
007.
「デニムの色から決める」
約週3ペースでボトムはデニム、というデニムフリークの樋口さん。合わせるバッグは、その日に穿きたい「デニムの色に合わせる」ことが簡単にバランス良く見えるポイント。
「ワントーンをぼやけさせないために、素材で差をつけるのが好き。これもレザーバッグの光沢感を利用し、黒デニムに黒レザー、白デニムには白レザーでそろえて同系色の中にエッジを残しました。
統一感とレザーの質感が生きることによって、Tシャツ・デニムでもカジュアルになりすぎず、意外とシーンを選ばないスタイリングです」(樋口さん)
樋口さんがこの春買ったアイテムは?
春服をひと通り見た樋口さんが真っ先に買った服。今シーズンのワードローブ計画とともにご紹介。
001.
「まずはモノトーンからアップデート」
「春へと移ろう時季に、いきなり派手色のアイテムを投入するのは気分が追いつかないから、まずはモノトーンの中で甘いデザインや柄にアップデート。
今年の春、注目はレース。オーソドックスにレースの甘さが引き立つ、白でとり入れるのが気分です。ひと目で惹かれたフレアのレースパンツは、ビッグニットを合わせてラフに試したい」(樋口さん)
002.
「ひと目で惹かれて購入」
白レースフレアパンツ 29,700円/THE NEWHOUSE(アーク インク)
「カジュアル向きの「気楽な甘さ」。クロシェ編みっぽいレースだから気負わずに穿けます。そんな素材なので動きやすく、シルエットも抜群にキレイ。股上をやや深めにとったハイウエストなので、ヒップの周りも目立たず、スタイル良く見えます」(樋口さん)
003.
「大きめなチェック柄もモノトーンで大人っぽく」
チェックコート 66,000円、同バッグ 17,600円/ともにTSURU By MARIKO OIKAWA
「同柄のバッグにも惹かれ、せっかくならということでセットで。大ぶりなチェック柄ですが、モノトーンなら大人っぽい印象。アウターはシンプルなコーディネートにバサッと羽織るだけで華やいだ印象に」(樋口さん)
004.
「ヴィンテージライクな甘さ」
白レースネックブラウス 17,600円/Jilky
「くたっとした風合いと、レトロなレースにひと目惚れ。あせたデニムに合わせたくなる絶妙な風合い。首まわりだけでなく、そでにティアード状にあしらわれたレースもかわいい」(樋口さん)
005.
「くたっとした風合いでスリーピースを」
黒リネンテーラードジャケット 35,200円、黒リネンベスト 17,600円、黒リネンワイドパンツ 26,400円/以上Jilky
「着方次第で年中活躍できるセットアップはスリーピースに注目。ビッグジャケットに1枚でトップスのようにも着られるベスト、ルーズなパンツはTシャツやタンク、足元はサンダルでもパンプスでも。着回しも利いて長く活躍してくれれそう」(樋口さん)
006.
「1枚でも重ねても重宝」
カップつき白タンクトップ 16,500円/Graphpaper 「自信が持てるカップつき。重ね着しても1枚でも。ボディをキレイに見せてくれる仕掛けが」(樋口さん)
ずっと愛用しているスタンダードなアイテムは?
季節を問わずに着ているシンプルな定番こそ、こだわりを。彼女が重視している選びのポイントとともにお届け。
001.
「いちばん使える愛用のスニーカー」
スニーカー 11,000円/ムーンスター(ムーンスター カスタマーセンター)
「ロゴもラインも余計なデザインが無く万能。何のひっかかりのないシンプルなローカットのスニーカーは1足あると便利。ムーンスターの白は長年、スタイリングにもプライベートでも愛用しています。パンツもスカートもボトムの形を選ばず使える」(樋口さん)
002.
「ソックスはラルフの中で二択」
「よく履くパンツはくるぶし丈、そしてローファーも好きなので、ワンポイントが絶妙にのぞくという理由で愛用。定番のネイビーと、よりさりげないゴールドベージュのモチーフ別にまとめ買い」(樋口さん)
003.
「年中定番=デニムに近い存在」
ベージュチノパンツ 27,500円/ポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン)
「ベージュの気品を頼りに、デニムよりも少しだけ背伸びしたいときにも有効。ベージュのチノパンの色は浅いものでなく濃度を少し増したような、キャメルに近いコクのある色味が合わせやすい」(樋口さん)
004.
「さし色にもなるブラウンを」
ブラウンレザーベルト 9,900円/TORY LEATHER(メイデン・カンパニー)
「引き続き短めなトップスが豊富。そんなトップスを合わせるときにも、ベルトがあるだけで行き届いたベーシックスタイルに。白ボトムやデニム、淡い上下の服にもブラウンは好相性」(樋口さん)
005.
「真っ白じゃないからむしろいい」
白デニムパンツ 11,880円/MOUSSY(バロックジャパンリミテッド)
「グレーの糸を使用した、影のある白だから浮いて見える心配もなし。カラーリングも絶妙な1本です」(樋口さん)