「オシャレゴコロをくすぐる」隠れた名作・ニッチな新作
オシャレのインスピレーションをかき立てられる映画のワンシーンの数々を、実際にマネできそうなポイントとともにご紹介。なかでも映画通としても知られるヘアメイク・小澤麻衣さんやアパレル関係者、職業柄多くの作品にふれてきた映画関係会社の方から、ぜひオススメ作品を聞き込み調査。知る人ぞ知る良作から、これから公開予定の新作まで選りすぐりをピックアップ。
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』(2025)

「憧れがつのる“本物”だけで構成された衣装」
「ポップで遊びゴコロに満ちたインテリアがとにかく目を引くウェス・アンダーソン監督作品。ユニークな配色や空間設計の映像美に加え、アクセサリーはカルティエ、バッグはプラダなどハイブランドに特注した衣装も必見です!」(映画宣伝会社)
INFORMATION
大規模なインフラ整備を計画する、大富豪のザ・ザ・コルダ。しかし資金難と陰謀に直面し、修道女見習いの娘リーズルと旅に出る。
配給:パルコ ユニバーサル映画 2025年9月19日(金)全国公開
『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』(2025)

「こだわりが光るレストラン収納は必見」
「劇中インテリアの素晴らしさに、俳優たちも驚きを隠せなかった本作。主人公のレストランは、壁の高さに合わせて収納棚をとりつけ、狭い空間を活用するなどヒントが満載!並べる物のセンスで、見せる収納を完成させた好例です」(映画宣伝会社)
INFORMATION
かつては永遠を誓い合ったアイビーとテオ。しかし夫テオの失職が原因で2人の関係は命がけの夫婦喧嘩に発展する。
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 2025年10月24日(金)全国公開
『サブスタンス』(2024)

「美の本質を問う怒涛のストーリー展開」
「元人気女優エリザベスが、秘密の薬“サブスタンス”を服用したことで、美と若さに執着していくさまを描いたサスペンス。二人の女優の振り切った演技と、物語のスピード感はまさに圧巻! ルッキズムや若さなど、『美』について考えさせられました」(ヘアメイク・小澤麻衣さん)
『ポンヌフの恋人』

「くすんだ夜空がぱっと華やぐ潔い白コート」
ポンヌフ橋で暮らす天涯孤独なホームレスの青年アレックスと、深い絶望の闇に生きる女学生ミシェルの愛を描いた作品。当時のフランス映画史上最高額の総製作費も話題に。
「ミシェルの着ている真っ白なコートが、雪の降るくすんだパリの夜空とグレーのポンヌフ橋を背景に、雪のように映えていて美しい。そでからちらっとのぞく、ブルーのニットもキュートです」(エディター・M.O)
『ビル・カニンガム&ニューヨーク』

『ファッションはよろいなんだ、日々を生き抜くための。』
by ビル・カニンガム
ニューヨーク・タイムズで人気ファションコラムを手掛けるフォトグラファー、ビル・カニンガムのドキュメンタリー。街角でスナップを撮り続けること50年あまりの彼の私生活は謎に包まれていた。2年間の密着取材により、ビル・カニンガムの素顔を映し出す。誰よりもファッションを楽しみながらストリートで撮影を続ける彼に、好感を抱く作品。
『ロバと王女』

『シェルブールの雨傘』などで知られるジャック・ドゥミ監督が、シャルル・ペローの童話『ロバの皮』を実写化したミュージカル映画。
「夢の中のような衣装と音楽、カトリーヌ・ドヌーヴの美しさは何十年たっても心をキュンとさせてくれます。ゴールドのドレスを着て、ブルーの鏡の前で手鏡をのぞき込んでいる場面はすべてが完璧」(デザイナー・尾崎美佳さん)
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』

子ども3人が全員天才児だったテネンバウム家。過去脚光を浴びたものの、父親の過ちと裏切りによって崩壊してしまった一家が、きずなをとり戻していく姿を描くコメディドラマ。
「テネンバウム家の長女、マーゴのファーコート姿が印象的。リュクスなミンクコートの中に着ているのは、なつかしいポロシャツワンピという不思議な組み合わせ。大胆な発想でマネしたくなります」(DIESELプレス・井上沙理さん)
『クレイジー・リッチ!』

舞台はシンガポール。恋人とそのセレブ一族との間でゆれる女性の葛藤を、アジア系キャストをメインに描くハリウッドラブコメディ。
「ヒロイン・レイチェルの大学時代の友人である、ペク・リンの実家のクローゼットルーム。高級ブランド服が一面に広がる部屋で、レイチェルの服にダメ出しをする場面。ペク・リンが着ている20万円超えのセットアップにもご注目」(ライター・U.T)
『シンプル・フェイバー』

小説『ささやかな頼み』が原作のサスペンス。行方不明になった友人と、彼女の手がかりを追うシングルマザーの秘密や過去が描かれる。
「ブレイク・ライブリー演じるエミリーは、大手アパレルブランドの広報部長。そんな彼女の自宅にあるクローゼット部屋には、高価なバッグや靴が壁一面に並んでいて圧巻。主演二人が着こなす、計50着もの衣装も見のがせません」(エディター・M.K)
『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』

『デザイナーに要求されるのは丹念にドレスを作ることではない。世の中を変えることだ。』
by ピエール・カルダン
天才的ファッションデザイナー、ピエール・カルダンの波乱に満ちた人生を追うドキュメンタリー。彼が生み出したアヴァンギャルドなデザインは「コスモ・コール」と呼ばれ、若者たちを熱狂させたが、ファッション業界からは拒絶された側面も。時代にも翻弄されながら、常に新しい感性を磨き続けた彼の生涯の仕事に迫る。
『コレクションする女』

「黒をさらっとシックに着るポイント満載!」
画廊のオープンをひかえたアドリアンは恋人の誘いを断り、骨董収集家との商談のために南仏の友人の別荘を訪れる。そこで自由奔放な美少女アイデに出会い、次第に惹かれてしまう。エリック・ロメール監督の『六つの教訓話』シリーズ第4作。
「シンプルな配色やアイテムで特別感はないのに、さらっと着こなすヒロイン・アイデに思わず嫉妬。黒ワッフルT×黒デニム、黒タンク×ブルーデニムなど、リアルでヒントになるスタイリングがたくさん登場します」(DIESELプレス・井上沙理さん)
『ラスト、コーション』

「中洋折衷コーディネートに注目」
第2次世界大戦中の1942年、日本軍占領下の上海を舞台に、抗日運動の女スパイと特務機関員の男の禁断の愛を描くラブサスペンス。
「主人公がチャイナ服の上に洋風コートを着る姿が好きです。コートのえり元からはチャイナ服特有のえりがのぞき、中国文化にひそかに憧れのある私にはたまらなく品を感じます」(アパレルショップスタッフ・土肥夕佳さん)
『満月の夜』

パリ郊外で恋人と暮らすルイーズは生まじめな恋人に疲れ、妻子持ちの男性と遊ぶようになる。二人の男性の間でゆれ動く女性の感情を繊細に描くロメール監督作。
「カーリーヘアをラフにまとめて、重厚感のあるコートを軽快に着こなす姿が魅力的。作中のルイーズはかなりキュートな役ですが、ハンサムな着こなしとのギャップも印象的でした。」(ファッションデザイナー・苅田梨都子さん)
『マリッジ・ストーリー』

結婚生活に葛藤を抱えた女優と舞台演出家の夫婦。彼らが離婚のプロセスに戸惑い、苦悩しながら別れるまでの過程を、リアルで辛辣かつ思いやりあふれる視点で描く人間ドラマ。アカデミー賞にもノミネートされた、Netflixオリジナル作品。
「スカーレット・ヨハンソン演じるニコールはN.Y.の前衛的な舞台女優。本当はL.A.でテレビ女優になりたい彼女の赤いラップドレス×黒のライダース姿は、不本意な舞台女優を演じているように見えて魅力的。」(フォトグラファー・水野美隆さん)
『夏の終り』

Ⓒ2012年映画「夏の終り」製作委員会
100万部を超えるロングベストセラーとなった、瀬戸内寂聴の同名小説を映画化。年上の男性と年下の男性との三角関係に苦悩する女性の姿を描いた作品。自身の女の業に悩む主人公を満島ひかりが見事に演じるほか、小林薫や綾野剛も出演。
「満島ひかりさんがとびきり美しい映画。小林薫さんや綾野剛さんの着物姿もステキで、あらためて身につけるものを楽しもう!と感じる作品です。満島さんは藍染め作家の役で、要所要所で美しい藍染めが登場します。着物と和装の魅力を再確認できる」(料理家・谷尻直子さん)
『アンナ』

「レインコートの着こなしに惹かれる」
田舎からパリへやってきた、アンナ・カリーナ演じるヒロインのアンナ。広告代理店の社長セルジュは、駅で撮影したポスターに偶然写り込んだアンナにひとめボレ。必死でその女性を探すが……。パリが舞台のポップなミュージカル。
「アンナが青や赤の服に重ねて着ているのは、要所に白テープの効いたクリアレインコート。使い捨てのイメージが強いビニールのレインコートが、ファッションに落とし込まれていて勉強になります」(ファッションデザイナー・苅田梨都子さん)
『お買いもの中毒な私!』

「クローゼットやドレッサーにも注目」
お買い物中毒の雑誌編集者レベッカが、経済誌の編集部に異動したことから巻き起こる騒動と成長を描いたロマンティックコメディ。
「N.Y.に住む記者レベッカは重度の買い物依存症。毎月カード会社からの請求に追われつつ、カラフルな洋服と靴であふれ返っている。作中で見られるオシャレなクローゼットやドレッサー、見せる収納方法など、模様替えの妄想も膨らむアイディアソースもたくさん」(ライター・Y・Tさん)
『オン・ザ・ロック』

「ハズしと着飾りの絶妙なさじ加減」
N.Y.で暮らすローラは順風満帆な人生を送っていると思っていたが、あるとき結婚生活に疑いを抱き始める。男女の問題に精通しているプレイボーイの父に相談し、父娘二人で夫の尾行に繰り出すが……。ソフィア・コッポラ監督・脚本作品。
「仕事も子育ても忙しいヒロイン・ローラの服装は、Tシャツやボーダートップスにデニム、スニーカーやスリッポンなどカジュアルでリアル。そこに合わせる書店トート×シャネルのバッグという組み合わせなどコーディネートのヒントになったシーンも多い1本」(エディター・M.O)
『ナイト・オン・ザ・プラネット』

「肌になじむボーイッシュスタイル」
L.A.、N.Y.、パリ、ローマ、ヘルシンキ5都市の同日の夜を舞台に、タクシー運転手と乗客との間に起こるそれぞれの物語を描くオムニバス映画。会話劇の中に見られるふとした言葉やエピソードが興味深く、観るたびに新たな発見も。
「タクシー運転手を演じるウィノナ・ライダーの黒のカーゴパンツ、白T、ミリタリーシャツの飾らない男前な着こなしが印象的。乗客のマダムの、上品に着飾った服装とのコントラストもいい。」(アパレルプレス・川辺圭一郎さん)
『クレイマー、クレイマー』

「自立した女性像を象徴する、メンズライクなトレンチコート」
毎晩仕事で深夜帰宅の夫に愛想を尽かした妻が家出。残された夫は仕事と家庭の両立に励むが……。妻を演じるのはメリル・ストリープ。
「家事と育児を押しつけられていた妻が、夫と子どもを置いて家を出ていくときにはおるバーバリーのトレンチ。家族を捨ててでも自立して生きていこうとする意志の強さを感じ、印象的です。」(エディター・M.O)
『さらば青春の光』

「ハンサムなロングレザーコートとモッズコートでおなじみのM-51」
1960年代のイギリスを舞台に「モッズ」と呼ばれた若者たちの、社会への行き場のない怒りなど生きざまを描いた青春映画の金字塔。世界中にモッズブームを巻き起こした。
「ベビーフェイスのステフがさらりと着るレザーコート姿はずっと憧れです。(panデザイナー・尾崎美佳さん) M-51パーカの着こなしのルーツが見られる作品。当時流行の最先端をいっていたモッズたちの先見の明に感心します。」(アパレルプレス・川辺圭一郎さん)