秋冬アイテムをひととおり見た、スタイリストたちの力を借りてワードローブづくりの参考になるトピックスをお届け。コーディネートルームで繰り広げられた何気ない雑談を掘り下げて、リアルに使えるトレンドをピックアップ。
【STYLIST MEMBERS】
(渡邊恵子さん) 大人のリラックススタイルが人気。実用性とスタイルアップを兼ねたアイテム選びに支持が集まる。 (樋口かほりさん)ベーシックでありながら、そのシルエット選びが絶妙と話題。ちょうどいい大人の甘さのさじ加減にも技が光る。 (岩田槙子さん)女性らしさが引き立つシルエットや服選びに定評あり。トレンドをうまく落としこむバランスに長けている。
(塚田綾子さん)小物企画を担当することも多く、シンプルな装いに素材や色づかいで遊びを効かせる提案が得意。 (船戸唯さん)メンズライクなムードを、女性らしくとり入れた装いが人気。サイズ感にこだわったアイテム選びにも注目。 (玉木穂香さん)シューズ企画を担当することも多く、足元まで考えられたスタイリングの提案はピカイチ。
スタイリストが注目する「3つの色と使い方」
膨大なコレクションルックの数々から、スタイリストが気になった今季の色の傾向をルックとともにご紹介。難しくない、マネできそうなポイントを踏まえつつ解説。
【1】
軸色は「グレー・ブラウン・カーキ」
それらの色を軸にしつつ「異素材をMIXしたワントーン」が旬。スエードやベロア、レザーなど、特徴のある質感を生かすことで、間のびしがちな暗いワントーンスタイルをうまくこなしていけるはず。
塚田さん:去年に引き続き、ブラウンやグレー、カーキなどアースカラーを多く見かけた印象です。そのなかでも異素材でスタイリングに変化を出したり、ヴィヴィッドカラーのさし色で遊んだりしているのが新鮮でした。色幅があるニュアンスカラーは、アイテムごとに濃淡の差をつけやすい。
渡邉さん:ハンサムなイメージのカーキやグレーも旬のツヤ素材をとり入れることで女性らしさをキープできる。異素材MIXでいうと、01.MICHAEL KORSはグレーのワントーンの中で顔まわりにニットを巻きつけたり、レザーのブーツでツヤのある質感を足したり、単調に見せない着方が参考になります。
船戸さん:確かにスタイリングにメリハリがついてステキです。グレーやカーキはニュアンスのある色だから、黒ほど印象が強くなりすぎず、重ね着しやすいのだなと思いました。
【2】
辛口に「パステル」
今まではアクセントとして使うことが多かったパステルカラーを、今季は主役に抜擢。メンズライクな形で甘く着ないのが各ブランドの共通ルール。
樋口さん:今シーズンは色ものが豊作なイメージ。パステルピンクや水色などのかわいい色を大胆に使いながらも、ハンサムに落とし込むスタイリングはぜひマネしたいです。〈写真右〉のフーディやレザー小物でピンクを辛く着る意外性に惹かれました。コートのハリ感も相まって、いっそうハンサムに。
【3】
黒のかわりに「ヴィヴィッド」で締める
定番アイテムを、鮮やかな原色にアップデートしてさし色的に活用。黒のように引き締める目的で、メインではなく脇役として使うのが新しい。
玉木さん:グレーとキレイな色の組み合わせにも注目。03.MIU MIUの鮮やかなブルーシャツを仕込んだルックは、多くの方が注目されていましたね。
岩田さん:いつもなら黒や白で整えていそうなところを、鮮やかなブルーをさし色に使うのが新しい。単色で見るとやや派手なブルーも、グレーと合わせると知的にまとまりますね。このルックは、ニットのそでやウエストからラフにシャツをのぞかせる、レイヤードのテクニックも参考になります。知的に装えるグレーとブルーの組み合わせは、オンタイムにも生かせそう。
注目色でつくるシンプルコーディネートの実例
旬の基本色・グレーやブラウンを軸に、シンプルでもオシャレ見えするアイテムの選び方、着こなし方をスタイリストたちがレクチャー。シルエットや配色、改めて覚えておきたいバランス感覚に優れた組み合わせの基本など、明日から役立つワザをまとめてご紹介。
マニッシュなパンツをワンサイズUP
「グレーのスラックスなどお堅いパンツは、ぶかっとしたようなサイズ感をウエストで締めて履くハイウエスト。今っぽいゆるっと感も演出しつつ、脚も長く見せれるタイプは1本あると便利。ハリのある素材やセンタープレス入りなら、よりきちんとした印象に」(岩田さん)
カラーニットは「白を重ねて肌感を減らす」
「デニムスタイルの1つに加えたいのが、濃紺のデニムパンツにロンTや靴下を挟み、肌を見せずにキレイめに仕上げること。パステルカラーもヴィヴィッドなニットもロンTを1枚中に入れて、白を効かせるだけで着やすくなります。肌が見える部分を少量の白で覆うのがポイント」(樋口さん)
秋からは「ブラウン」カジュアルよりも「キレイ」を意識
「ブラウンの色み自体レトロな雰囲気でほっこり、地味に見えがち。パンツもそうですが、スカートも細め、あるいはまっすぐのIシルエットでとにかくシャープに見えるものを基本に選ぶといいと思います。パンツがワイドだったり、カジュアルなものだとややおじさんっぽくなるので、振り切って女らしい、コンサバなアイテムに振り切るのが正解」(岩田さん)
オーバーサイズは厚みのある生地で
「ゆるいものどうしを手抜きに見せないポイントは、濃紺×グレーの紳士な配色や、厚みのある素材を入れるなど「かっちりした要素」。上下ともにオーバーサイズのときは、厚手の素材でシルエットにあまり動きが出ないようにすれば、きゃしゃな体も演出できます」(樋口さん)
グレーに向く「ふわふわ」でニットとデニムも退屈しない
「毛足の長さとVネックからのぞくデコルテとの対比を楽しみたい。トップスが重くなるぶん、あせたブルーデニムの軽さがかえってちょうどいい。ファーのようなニットとグレーとあせたデニムのトーン、繊細なアクセサリー。単純な合わせでも、そう見えない理由が凝縮」(樋口さん)
黒に近しいチャコールティアード
「コンパクトなGジャンをシャツのように。ツヤ感のある甘いティアードも、チャコールグレーなら大人っぽい印象。トップスにはタートル+コンパクトなGジャンのドレスダウンもよく似合う」(樋口さん)
甘い色とルーズなグレー
「完璧なハンサムパンツはもちろん。もう1つパンツでグレーをとり入れるならルーズなシルエットを。配色もシルエットも、キリッとさせすぎない今のムードに合う、「紳士」というより「少年」のような、力の抜けたルーズなマニッシュ」(樋口さん)
渋いカーキをアウターで
「昨年のセリーヌのルックですが、少し辛口なあせたカーキのコートと、デニムのスタイリングが新鮮。コートは形がかっちりしているのでミリタリーに転ばず、エレガントな印象を保てるのだと思います」(渡邉さん)