「コーディネートは力ませない」人気スタイリストに聞いた「力の抜き方」

カジュアルで気負わない服がベースでも、どこか色香を感じさせる樋口さんのスタイリングを深掘り。センシュアル=“どこかカッコよさを含んだ女性像”という樋口さんの考えをもとに、ちょうどいいバランスをひもときます。




【担当スタイリスト・樋口かほりさん】
ベーシックなアイテムを軸としながら、女性らしい小ワザを効かせたスタイリングが大人気。忙しく動きまわる日々をオシャレに過ごせる、リアリティのあるアイテム選びに定評。



樋口さんが考える「コーディネートの心得」

①「ゆるいシルエット=カジュアルでルーズ」は捨てる
②ポイントにしたいならあえて「目立たせない」選択を
③メイクもヘアも「スタイリングの一部」と解釈



1.
「メンズサイズがメンズっぽいとは限らない」

「ピタピタとしたわかりやすいシルエットは、着ている側にも見ている人にも“がんばらなきゃ”と思わせてしまう。メンズサイズのようにゆったりと大きいシルエットで選ぶと、華奢さが強調されるうえにマインドもラク。女らしさを無理なく印象づけられます。」(樋口さん)




ウィメンズの服では出せないアンバランスさ

黒ワイドニットカーディガン(メンズ)64,900円/ATON(ATON AOYAMA) 黒レザースカート 29,700円/プランクプロジェクト(プランクプロジェクト 青山店) サングラス 15,400円/STATUS ANXIETY.(ジャック・オブ・オール・トレーズ プレスルーム) バッグ 参考商品/COS(COS青山店) ソックス 660円/靴下屋(タビオ) パンプス 19,800円/ル タロン グリーズ(ル タロン グリーズ ルミネ新宿店) 


ゆるさとVネックのギャップにより引き立つ、デコルテ見せの女らしさ。長めのそでからのぞく手元も要に。




2.
「隠せる今こそミニの出番」

「コートでおおったり、タイツやブーツでなじませたり。夏本番よりも目立ちにくくなるから、思いきりのいい丈も気恥ずかしくなく挑戦できる。中でもレザーやウールなど上質な素材は昔よりも年を重ねた今のほうが似合うはず。」(樋口さん)




ラクでも品よく見えるローファーが適任

黒ウールミニスカート 14,300円/スピック&スパン(スピック&スパン ルミネ有楽町店) グレーコート 77,000円/トミー ヒルフィガー(トミー ヒルフィガー カスタマーサービス) 黒フーディ 18,700円/SeaRoomlynn グレーTシャツ 24,200円/SEA(エスストア) イヤリング 7,560円/アビステ タイツ 2,640円/靴下屋(タビオ) バッグ 141,900円/J&M デヴィッドソン(J&M デヴィッドソン カスタマーセンター) ローファー 9,130円/HARUTA 


スニーカーは幼く、ブーツだとややコンサバ。そのちょうど間をとれる細身のローファーがきちんとしながら気張らないバランスを形成。合わせるタイツはわずかに透けるリブを選択。



POINT 「色数もできるだけ使わずとけこませるのがポイント」

「トップスやタイツとできるだけトーンを近づけて一体感を出すと、ミニも照れずに着られます。短めならより好バランス。」(樋口さん)




3.
「足先だけで空気が変わる」

「基本カジュアルな装いが好きなのですが、少しの洗練さを求めて靴はあまり主張しすぎない、華奢な細身を選ぶことが多いです。ワイドパンツのすそからつま先がちょっとのぞくくらいでも充分効果的。」(樋口さん)




スポーティなブルゾンがしゃんとする足先に宿したわずかな緊張感

黒ウールブルゾンジャケット 37,180円/ナイキ スポーツウェア(NIKE カスタマーサービス) ブラウンニットパンツ 8,990円/Gap サングラス 42,900円/NOCHINO OPTICAL(NOCHINO OPTICAL南青山本店) ショートブーツ 47,300円/PIPPICHIC(ベイジュ) 


フォルムが美形だから、ニットパンツでブラウンを選んでもほっこり見えない。ほどよくワイドなすそから鋭いつま先をのぞかせることで、スポーティなブルゾンも洗練される。




POINT 「ラクできるパンツほど足元はきちんとさせる」

イメージは夏にはくビーサンのようなヌーディ感。服は着心地重視、小物できちんとさせればカジュアルでも大人っぽく。(樋口さん)




4.
「小さな赤の即効性」

「アイテム自体はカジュアルなものを選んでもそれだけでおのずとレディな雰囲気を足せる赤。目を引く強い色だから、気張らずにとり入れたいときはリップ感覚で“小物で小さく”がオススメです。」(樋口さん)




さらりと持てるラフな巾着でレオパード柄×赤の迫力を引き算

キャメルロングニットカーディガン 80,300円/スカリオーネ(トレメッツォ) 白Tシャツ 7,150円/ROLLA’S(ジャック・オブ・オール・トレーズ プレスルーム) レオパード柄サテンパンツ 11,990円/SeaRoomlynn サングラス 39,600円/プロポ(プロポデザイン) 赤ミニバッグ 9,900円/SEA(エスストア) ショートブーツ 31,900円/TODAYFUL(Life’s 代官山店) 


これで黒小物はややハード。キャッチーな赤だから親しみが残る。




5.
「あなどれないジュエリーの力」

「服がボーイッシュであるほど生きてくる、相反するジュエリーの女っぽさ。大ぶりのものでアクセントにしつつ、メイクやヘアはあえてつくりこまず引き算をしてトータルバランスを図って。」(樋口さん)




ロゴスウェットのモチベーションを上げるビッグフープの確かな存在感

シルバービッグフープピアス(片耳売り) 各25,300円/e.m.(e.m. 青山店) グレーロゴスウェット 3,850円/原宿シカゴ(原宿シカゴ 神宮前店) 黒タートルニット 19,800円/チノ(モールド) 

「ジュエリーをつけている」というマインドで、スウェットの格も引き上がる。ごろんとしたタイプでもOK。




6.
「少しだけ力を抜く」

「ジャケットの知的でハンサムな持ち味は残しつつ意図的にずらした肩幅の違和感で想像させるスレンダーなシルエット。正統派なものはてろっとしすぎるとただのルーズにも転びかねないので個人的には強さを適度に残せるカドのある形のほうが好み。」(樋口さん)




後ろ姿だけで物語るわかっている人の「計算高いエフォートレス」

グレーオーバージャケット 39,600円/プランクプロジェクト(プランクプロジェクト 青山店) ダメージデニムパンツ 4,950円/原宿シカゴ(原宿シカゴ 神宮前店) バッグ 49,500円/カルバン・クライン(カルバン・クライン カスタマーサービス) バレッタ/スタイリスト私物 


羽織るだけできちんとした中にラフさも帯びるカットオフデザイン。ボトムにはダメージデニムを合わせてジャケットをふだん着として採用。ボトムにはダメージデニムを合わせてジャケットをふだん着として採用。




7.
「重ねるからこそギャップが生きる」

「やわらかな風合いからふいにのぞくレザーの強さやサテンの上質な落ち感。質感に変化をつくると、シンプルな装いでも“なりたい人物像”に近づける。そういう意味でも、選べるアイテムが多く、レイヤード必須ないまの季節は女っぽさを表現しやすい季節。ワントーンにすると素材の存在感が引き立ちます。」(樋口さん)




ボアから見え隠れするレザーでやさしさと強さを同時に演出

グレーボアコート 41,800円/クラネ(クラネデザイン) 黒レザーキャミワンピース 55,000円/THIRD MAGAZINE ブレスレット 92,400円、右手人さし指リング 60,500円、右手薬指リング 52,800円、左手人さし指リング 63,800円、/以上ノアーク(ノウン) 


ドレッシーなレザーワンピースにふかふかとした素材を羽織って緊張感を緩和。広めに開いたデコルテも意志のある女性像をあと押し。




素材の異なる白を重ねてシアーなインナーの繊細さを引き立てる

白Vネックニット 33,000円/レイヤーズ(ジャーナル スタンダード 自由が丘店) オフ白ワイドシャツ 24,200円/HER. アイボリータートルシアートップス 9,900円/Nave(NAVE)


パリッとしたシャツを挟んだことにより、フェミニンとはまた違う、知性がにじむ白を確立。




肩ひじ張らず「ハズしもしない」ゆるやかなIライン

共布ベルトつきベージュコート 110,000円/カルバン・クライン(カルバン・クライン カスタマーサービス) ベージュバックオープンニットベスト 8,000円/TW 白サテンフレアスカート 19,800円/リアム プラージュ(プラージュ ルミネ有楽町店) イヤリング 4,900円/COS(COS青山店) 時計 7,150円/カシオ クラシック(カシオ計算機 お客様相談室) バッグ 16,940円/ヴュレ(キューズ) ブーツ 41,800円/TSURU By MARIKO OIKAWA


ストイックなIラインをつくりニュアンスサテンを気高くシフト。落ち着いた色みがゆるく開いたネックラインを気だるくキレイなバランスに昇華。




見せるのではなく「見える」樋口さんのコーディネート理論

見せるのではなく「見える」。そんなさりげないワザが効いたスタイリングで、毎号反響を呼ぶスタイリスト・樋口かほりさん。過去に手がけたスタイリングをもとに、そのファッションセオリーをあらためて解剖。リアリティのあるスタイルを生み出すうえで大切にしている「言葉」をワードローブづくりのヒントに。




「デニムは前より後ろ」

「ヒップやパッチなど、服の中でもとくにデニムは後ろが絵になる服。右の写真はヒールまで赤いサンダルにしたり、ヘアにリボンを飾ったり。顔が見えないぶん「何が好きな人か」を感じさせる後ろ姿を意識的に表現しました」(樋口さん)




「赤はとっておく」

「いつもはベーシックな色を好む人が、ある日突然赤をさらっとまとう姿には、ドキッとさせられるものがある。だから私の中では、赤=いざというときの色。シンプルなデザインを選ぶなど、無理のない取り入れ方が大事だと思います」(樋口さん)




「白は派手な色だから」

「清潔感や知性のある白は、同時に緊張感のある色。白シャツなど正統派なものだとその印象はさらに高まる。ALL白ならなおさら。Tシャツやあえてストラップつきのパンツなど、なるべく「隙がある白」を選んでいます」(樋口さん)