河出書房新社
今いちばん読みたい書き手の散文集。――阿部日奈子(詩人)ほか、作家、批評家、書店主など各方面から絶賛を浴びる珠玉のエッセイ。
株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)より2024年12月刊行、笠間直穂子著『山影の町から』が、今年5月、第73回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞いたしました。
庭と植物、自然と文学が絡み合う土地、秩父に暮らす著者が、真摯に生きるための「ことば」を探し、綴られた清冽なエッセイは、刊行後、多くの作家、詩人、批評家、書店主より賛辞を贈られ、各紙誌で好評を博しています。
1952年創設以来、70年以上にわたり錚々たるエッセイスト、作品を顕彰してきた日本エッセイスト・クラブ賞の受賞は大きな反響を呼び、即重版が決定。また、これを記念して、本書収録作3篇の試し読みを無料公開いたします。ぜひご覧ください。
■Web河出『山影の町から』試し読み
第1回「常山木」 6月26日(木)17時公開
https://web.kawade.co.jp/tameshiyomi/131095/
第2回「ふきのとう」 6月27日(金)10時公開
https://web.kawade.co.jp/tameshiyomi/131120/
第3回「消される声」 6月28日(土)10時公開
https://web.kawade.co.jp/tameshiyomi/131205/
本書P6より(撮影=著者)
練達のフランス文学者による清冽なエッセイ『山影の町から』
なぜ東京から秩父に引っ越したのかと、よく聞かれる。答え方はいろいろあるが、いい匂いを嗅いでいたかったという理由は大きい。下水と排気ガスとセメントとアスファルトと樹脂と化学薬品と吐瀉物の臭いが逃げ場をなくして巨大な擂り鉢の底に溜まっているのは、そのなかに潜ってしまう快楽があるのも真実だが、呼吸は浅くなる。
(本書収録「常山木」より)
『山影の町から』は、東京都内から埼玉県西部の町、秩父へ移り住んだ著者、笠間直穂子が、2020年9月からインスクリプト・ウェブサイトで毎月発表したエッセイ29篇に、書き下ろし1篇を加えた初の単著。庭の草木や近所の花々、仰ぎ見る山々と多様な自然の姿、友人たちや出会った人々との交流といった日常風景がきっかけとなり、呼び起こされる記憶、巡らせる思索がしなやかに紐づき、解けながら述懐される珠玉のエッセイです。
秩父で暮らすことで興味を引かれた作家たち、親しんできた作品へ抱く新たな感慨、遠い過去から現在まで抱え続ける社会の諸問題、女性たちの痛み――。長年フランス文学の研究にいそしみ、大学で教鞭をとる著者の視点、知性に裏打ちされた静謐な筆致に心奪われながら読みすすめると、私たちそれぞれの感性が徐々に研ぎ澄まされ、目に映る光景に鮮やかな色どりが加わり、自分自身を慈しむ気持ちにふと気づかされる、そんな極上の読書体験をお約束します。
第73回日本エッセイスト・クラブ賞受賞の言葉より(一部抜粋)
思索は、体験の一種なのだ、という感覚が、わたしにはあります。考えることと感じることはひとつづきだ、と言い換えてもいいかもしれません。そういうことを、これからも、書いていくことになるだろうと思います。そして、そういうことを書くのに、もっとも適した器が、エッセイ、あるいは散文ではないか、そんな気がしています。
――笠間直穂子
『山影の町から』2刷帯・写真部分/秩父・美の山(撮影=著者)
『山影の町から』へ寄せられたコメント
今いちばん読みたい書き手の散文集。
――阿部日菜子(詩人)
静かな口調なのにあたたかみがあって、
読んでいるとまるで精緻なデッサンを見ているように引き込まれる。
――絲山秋子(小説家)
風や水のゆらめきを気配で感じとる耳には、歴史の奥に消された声さえ聞こえる。
――くぼたのぞみ(翻訳家・詩人)
秩父の自然を綴るなかに、深い霧のような知の涼気が渡る。
清しく果敢な精神のかたち。
――小池昌代(詩人・作家)
その筆は幼少期やこれまで読み親しんできた書物へと、
ほとんどプルースト的と形容したくなるような仕方で移っていく。
――澤田直(フランス文学・思想)
ただ美しいだけではない、時に迫ってくるような自然の近くで暮らしながら生まれた、
清冽な言葉。
――辻山良雄(Title店主)
著者紹介
笠間直穂子(かさま・なおこ)
1972年、宮崎県串間市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科単位取得退学。国学院大学文学部教授。フランス語近現代文学研究、仏日文芸翻訳。2010年、M・ンディアイ『心ふさがれて』(インスクリプト)の翻訳で第15回日仏翻訳文学賞、2025年『山影の町から』(河出書房新社)で第73回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。
他の著書に、『文芸翻訳入門』(フィルムアート社、共著)、『文学とアダプテーション』(春風社、共著)、『鳥たちのフランス文学』(幻戯書房、共著)ほか。訳書に、M・ンディアイ『みんな友だち』(インスクリプト)、『ねがいごと』(駿河台出版社)、モーパッサン『わたしたちの心』(岩波文庫)、C・F・ラミュ『パストラル ラミュ短篇選』(東宣出版)、『詩人の訪れ 他三篇』(幻戯書房)、J・F・ビレテール『北京での出会い もうひとりのオーレリア』(みすず書房)、G・クレマン『第三風景宣言』(共和国)ほか。
書誌情報
書名:山影の町から
著者:笠間直穂子
仕様:四六判/並製/224頁
発売日:2024年12月2日
税込定価:2,200円(本体2,000円)
ISBN:978-4-309-03933-6
写真:著者
装丁・組版:佐々木暁
書誌URL:
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309039336/